株式会社帝国データバンクは2022年11月10日、「コスト高騰による企業への影響アンケート」の結果を発表した。調査期間は2022年11月4日~9日で、1,452社から回答を得た。調査から、コスト高騰の影響を受け厳しい状況にある企業経営の実態や、その要因などが明らかとなった
事業存続について「厳しいが継続は可能」とする企業が半数超
原材料費や光熱費等の高騰が続き、企業においてもさまざまなコスト上昇が懸念される中、企業経営の実態はどうなのだろうか。帝国データバンクはまず、「コスト高騰の影響」を尋ねた。すると、「影響を受けていない」との回答は3.7%にとどまった。9割以上がコスト高騰の影響を受けていることが見受けられる。しかし、影響を受けている企業の中でも、「影響はあるが現時点では余裕がある」が33.4%、「厳しいが事業の継続は可能」が54.3%、「すでに限界」が6.5%と、業況の厳しさには差があることがうかがえる結果だった。さらに、「すでに限界」とした企業(6.5%)の内訳は、「仕入れ先を検討中」が2.5%、「主力部門以外の強化・主力部門の縮小/撤退、業態転換を検討中」が1.5%、「企業の存続危機」が2.5%だった。限界の状態を打破しようと対策を検討している企業もみられる一方で、すでに企業存続の危機に瀕しているところもあるようだ。
企業規模が小さいほど「存続危機」の割合が高まる傾向に
また同社は、「すでに限界」と回答した企業を規模別に分析している。すると、「大企業」では2.1%となり、全体の6.5%から4.4ポイント下回った。他方の「中小企業」では7.2%、「小規模企業」では11.4%となった。企業規模が小さいほど、「すでに限界」とした企業の割合が高まった。さらに内訳をみると、「企業の存続危機」を選択した企業は小規模企業が4.7%(大企業:なし、中小企業2.9%)で、大企業・中小企業よりも割合が高かった。企業からは、「弱小企業では価格転嫁が思うようにならない一方で、国からの賃上げ要請もあり苦しい状況である」(塗料製造)といった声があがったという。
建材・家具、化学品メーカーで「すでに限界」との回答が1割超
最後に同社は、「すでに限界」との回答を業種別に分析している。すると「建材・家具、窯業・土石製品製造」で12.5%と、全体(6.5%)より6ポイント上回った。また、「化学品製品」で12.2%、「不動産」と「飲食料品・飼料製造」がともに9.4%となった。さらに、「すでに限界」と「厳しいが事業の継続は可能」の合計値は、「飲食料品・資料製造」が81.1%、「建材・家具、窯業・土石製品製造」が78.1%であった。
自由回答では、「原材料の値上げ分のコンクリートへの価格転嫁が遅れるなか、電気料金についても驚くほどアップしている」(生コンクリート製造)、「材料や資材費の高騰分を、十分に価格転嫁できていない」(工業用プラスチック製品製造)との声が寄せられたという。
コスト高騰のあおりを受け、事業継続が厳しいとする企業は規模が小さくなるほど多い実態が浮き彫りとなった。価格転嫁が遅れていることを懸念する声も寄せられており、今後も先行き不透明な状況が続くことが予測される。経営が厳しい企業では、先の状況を予測しながら業態転換などの方法を含め対策を検討していく必要もあるだろう。