株式会社パソナグループは2022年11月11日、「“大離職時代”の企業活動への影響」に関する調査結果を発表した。本調査は、日本、アメリカ、カナダ、香港、韓国、台湾、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インドの計12カ国・地域の日系企業の人事担当者を対象に、2022年8月5日~16日に実施され、有効回答数は821社。調査結果では、新型コロナウイルス感染症拡大による働く人の価値観や、グローバルで事業展開する企業の今後の人事方針などが明らかとなった。
約8割が「コロナ禍で従業員の仕事に対する価値観が変化した」と回答
新型コロナウイルス感染症拡大以降、労働環境は大きく変化した。アメリカでは「大離職時代(Great Resignation)が到来した」とも報じられ、企業活動に大きな影響を及ぼすことが予想されている。では、グローバル企業で働く人事担当者はどのような実感を持っているのだろうか。パソナグループはまず、「コロナ禍を経て、従業員の仕事に対する価値観や会社への要望・期待が以前と比べ変化していると思うか」と尋ねた。すると、「変化した」が79%、「変化していない」が21%となった。「勤務形態に対する要望の変化」が8割と突出
続いて同社は、仕事に対する価値観や会社への要望・期待が「変化した」と回答した人に、「具体的にどの項目で変化を感じているか」を尋ねた。すると、「勤務形態に対する要望」が82%で、突出して多かった。以降は、「就労環境に対する要望」と「会社・仕事に対する考え方」がともに56%、「給与・福利厚生への要望」が39%と続いた。人事は「従業員の変化」が業績に与える影響をどう見ているか?
また同社は、「従業員の価値観の変化は業績に影響を及ぼすと思うか」と尋ねた。すると、「プラスの影響がある」が26%、「マイナスの影響がある」が29%となり、意見が分かれた。他方で、最も多かった回答は「(影響を及ぼすか)わからない」で37%となり、新型コロナの影響が収束しない中で、判断がつかない企業も多いことがうかがえる。
「コロナ禍前より離職者が増加」は約4割。特に多いのは若年層
次に同社は、「コロナ前と比較した直近の離職者数の増減」について聞いた。その結果、「変化なし」が55%、「増加」が39%、「減少」が6%となった。同社によると、離職者の状況については、組織階層が下位レベルの従業員や、入社年次が若い従業員層での増加幅が大きかったという。
コロナ禍前と比較し、「働き方」を理由に離職する人が増加
さらに同社が、“コロナ禍前”と“コロナ禍の直近12ヵ月間”のそれぞれにおける「離職理由のトップ3」を尋ねたところ、「コロナ禍前」と「直近12ヵ月」でトップ3の項目は同様だった。しかし、回答割合は減少しており、「給与・福利厚生」(63%→60%)、「キャリアアップ」(53%→47%)、「業務内容」(40%→37%)などとなっていた。一方で、増加に転じた項目もあり、特に顕著だったのは「働き方」(15%→26%)で、11ポイントアップと最も増加幅が大きい項目となった。
“大離職時代”への対策は「給与見直し/昇給」など従業員エンゲージメント関連に
最後に、同社は「“大離職時代”おいて、今後どのような対策を検討しているか」と尋ねた。すると、トップは「給与テーブルの見直し/昇給」で46%となり、2位は「在宅勤務に適したシステムなどの導入」が36%、3位は「より効果的な人事評価制度導入」が35%と続いた。
調査結果では、約8割の企業が「コロナ禍で従業員の価値観に変化があった」と認識していた。さらに、約4割が「直近1年で離職者が増加傾向にある」と把握していた。このような傾向を踏まえ、企業側は「従業員の離職理由やエンゲージメントの状態」を多角的に分析し、離職を防ぐためにできる対策を考えていく必要があるだろう。