“人的資本経営の実践・普及”を目指す「一般社団法人人的資本経営推進協会」が設立。顧問に一橋大・伊藤邦雄氏が就任

一般社団法人人的資本経営推進協会は2022年11月16日、同協会を同年10月17日に設立したと発表した。国内において人的資本経営の普及をより一層図ることが、協会設立の目的だという。同協会は今後の活動を通じ、国内企業の持続的な企業価値向上に繋げたいとしている。

企業における「人的資本経営」の実例研究を行い、官民一体で情報を発信

「人的資本経営」とは、企業経営において従業員が持つ知識や能力を「資本」とみなし、企業価値の持続的向上に繋げる新たな経営のあり方を指す。2018年に国際標準化機構(ISO)が人的資本の情報開示に特化した国際規格「ISO30414」を発表し、国際的なルールが制定された。さらに2020年には、米証券取引委員会が「人的資本の情報開示」を上場企業に義務付けるなど、人的資本経営に関する取り組みは世界的に推進されている。

日本国内においても、2022年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定され、2023年度から上場企業に対して「人的資本情報の開示」を義務付ける方針が打ち出された。これにより、上場企業および関連会社・上場準備企業経営者には、人的資本経営をより一層推進していくことが求められている。一方で、国内ではいまだ人的資本経営の具体的な実践例が少なく、手探りで取り組んでいるのが現状だという。

一般社団法人人的資本経営推進協会は、そうした課題の解決を目指すべく設立された組織だ。同協会では、人的資本経営における現場の課題を取り上げ、その解決策の摸索を通じて、普及を支援していくという。さらに行政・企業と連携し、企業の取り組みについての情報収集や情報発信を図りたいとしている。

なお、同協会の代表理事には、株式会社ZENKIGEN 代表取締役の野澤比日樹氏ら3名が、理事には株式会社i-plug 代表取締役の中野智哉氏ら3名がそれぞれ就任した。また、協会顧問を一橋大学 CFO教育研究 センター長/人的資本経営コンソーシアム会長の伊藤邦雄氏が務めている。

2023年に、上場企業に対して人的資本情報の開示が義務化される予定であることから、「人的資本経営」への関心が高まっているが、実例が少ないために対応に苦慮することもあるだろう。自社の人的資本経営推進に際しては、同協会が発信する他社事例などが参考となりそうだ。同協会および国内における人的資本経営の今後の動向にも期待したい。