日系企業と外資系企業で「男性育休の取りづらさ」は違うのか。グローバル人材への調査でわかった“柔軟な働き方”の重要性とは

ヒューマングローバルタレント株式会社は2022年10月12日、「男性の育児休業に対する意識」に関する調査結果を発表した。調査期間は2022年6月8日~13日で、日本国内に居住し、同社が運営するバイリンガル向けの求人情報サイトへ登録している人(以下、「グローバル人材」と呼ぶ)406名(日本人:239名、外国人:163名)から回答を得た。調査から、グローバル人材の「出生時育児休業」(以下、産後パパ育休)に対する認知度や、育休取得にまつわる実態が明らかとなった。

6月時点では8割のグローバル人材が「産後パパ育休」を認知していない

2022年10月より「産後パパ育休」制度がスタートし、男性育休への関心が高まっているが、グローバル人材における認知度はどうなのだろうか。まずヒューマングローバルタレントは「“産後パパ育休”を知っているか」を尋ねた。すると、制度開始前約3ヵ月の時点では、「はい」(知っている)が19%だった。対して、「詳しくは知らないが聞いたことはある」は39%、「知らない」は42%で、両者の合計は81%となった。

また、同回答を回答者の勤務先別に「日系」、「外資系」で分類すると、「詳しくは知らない」と「知らない」との合計値が「日系」で84%(詳しくは知らない:38%、知らない:46%)、「外資系」では78%(詳しくは知らない:44%、知らない:34%)となった。
日系企業と外資系企業で「男性育休の取りづらさ」は違うのか。グローバル人材への調査でわかった“柔軟な働き方”の重要性とは

外資系企業の方が「男性育休取得実績」が高い結果に

次に同社は、「自身が勤務する企業において男性で育休を取得した人がいたか」を尋ねると、全体では「はい」が25%、「いいえ」が38%、「わからない」が35%となった。

また、企業種別に「育休を取得した男性がいた」とする回答を見てみると、日系企業で21%、外資系企業で33%となった。さらに、「育休を取得した男性がいない・わからない」との回答についても、日系では77%、外資系では65%と、外資系企業の方がより男性育休の取得が促進されていることがわかる結果となった。

他方で、「実際に育休取得をしたことがあるか」を尋ねると、日系で2%、外資系で3%と、ともにわずかだったという。
日系企業と外資系企業で「男性育休の取りづらさ」は違うのか。グローバル人材への調査でわかった“柔軟な働き方”の重要性とは

「男性育休の取得しやすさ」も外資系企業が日系企業を上回る

続いて同社は、「勤務中の企業は男性育休が取りやすい環境か」を尋ねた。すると、「はい」が40%、「いいえ」が60%となった。企業種別では、「はい」との回答は日系企業で35%、外資系企業で49%、「いいえ」は日系で65%、外資系で51%となった。
日系企業と外資系企業で「男性育休の取りづらさ」は違うのか。グローバル人材への調査でわかった“柔軟な働き方”の重要性とは

「男性育休の取得しやすさ」には“柔軟な働き方”が関係か

また、「男性育休の取得しやすさ」についてのそれぞれの回答に対する「理由」をフリーコメントで求めると、以下の通りの回答が得られたという。

<取得しやすい環境である理由>
【日系企業】
・男性育休取得率100%であり、男女問わず育児中や短時間勤務中の社員が管理職へ昇格している事例がある(その他の業種)
・「育休取得が当たり前」という雰囲気がある(通信・情報サービス関連)

【外資系企業】
・海外のオフィスで多数の男女が育休取得をしている実績がある(その他の業種)
・男女平等を重視するため、育休は両親ともに3ヵ月以上取得できる(通信・情報サービス関連/本社がスウェーデンの企業の社員)

<取得しにくい環境である理由>
【日系企業】
・女性でさえも産育休を取りづらい環境である(化粧品メーカー)
・男女ともに復帰後の労働環境が整っていない(その他の業種)
・人員に余裕がなく、仕事が属人的なものが多い(銀行・証券関連)

【外資系企業】
・慢性的に仕事量が多く休暇取得の計画ができない(銀行・証券関連)
・会社規模が小さく、休業の代替要員の確保が困難。復帰後に同じポジションに戻れない(旅行・ホテル・レジャー・外食)

日系・外資系ともに、男性でも育休を取りやすい企業は、普段から男女問わず働き方に柔軟性があることがうかがえる。一方で、取得が難しい企業は、企業種にかかわらず普段からの業務量が多く、育休に限らず休暇を取得しにくい環境であり、男性育休の前例も少ないことで、育休取得を申し出にくい状況があると推察できる。

日系では「リモートワーク」、外資系では「フレックス勤務」が求められている

また同社が、「育児の影響で転職をしたことがあるか」を尋ねると、「はい」との回答は、日系・外資系とも3割程度になったという。

さらに、育児の影響で転職を経験した男女に「転職先の職場環境に求めること」を尋ねると、日系企業勤務者は「リモートワーク」、外資系企業勤務者は「フレックス勤務」がそれぞれトップとなった。同社は本回答から、「日系では“勤務時間”を重視する傾向が、外資系では“成果”を重視する傾向が見られる」と考察している。いずれも、時間に余裕が持てない育児中は、柔軟な働き方が可能な職場を求めていることがうかがえる結果といえそうだ。
日系企業と外資系企業で「男性育休の取りづらさ」は違うのか。グローバル人材への調査でわかった“柔軟な働き方”の重要性とは

7割以上が「男性の育休取得」に肯定的な意見

最後に同社が、「男性も育休をもっと取得したほうがよいと思うか」を尋ねると、「はい」が74%、「いいえ」は4%となった。企業種別でも、「はい」との回答は日系企業で75%、外資系企業で74%、「いいえ」は日系、外資系企業ともに4%にとどまった。
日系企業と外資系企業で「男性育休の取りづらさ」は違うのか。グローバル人材への調査でわかった“柔軟な働き方”の重要性とは
6月時点では、グローバル人材の8割以上が「産後パパ育休」制度を「認知していない」実態が明らかとなった。一方で、男性育休に対しては肯定的な意見が多数を占めており、男性の育児参加への意識の高まりがうかがえる。男性の育児参加をより促すためには、企業側は、より柔軟性のある働き方を実現できる施策を取り入れる必要がありそうだ。