株式会社マイシェルパは2022年9月7日、「パワハラ防止法適用後の課題」に関する調査結果を発表した。調査期間は2022年7月6日~11日で、従業員規模25名~100名の企業経営者250名、人事担当者250名および、従業員規模101名以上の企業経営者250名、人事担当者255名の計1,005名から回答を得た。調査から、パワハラ防止法適用後における企業のパワハラ対策の実態や、課題などが明らかとなった。
パワハラ対策の「相談窓口設置」における中小企業の対応の遅れが懸念される
2022年4月から、大企業に加え中小企業においてもパワーハラスメント(以下、パワハラ)の防止および対策の実施が義務付けられたが、パワハラ防止法適用後、企業の取り組みはどのような状況なのだろうか。マイシェルパはまず、企業規模別に「パワハラの相談窓口を設けているか」を尋ねた。すると、従業員25名~100名の企業は「社内に設けている」が47.4%、「社外に設けている」が19.2%で、「設けている」の合計は66.6%となった。また、従業員101名以上の企業は「社内」が77.8%、「社外」が11.3%で、同合計が89.1%という結果だった。「相談者の情報漏えい」や「役職者・年長者・キーマンへの指導」が課題に
次に、「“社内に”パワハラ相談窓口を設けている」と回答した人に「相談窓口を設置して感じた課題」を尋ねると、「相談者の情報が社内に漏れる」が34.6%で最多だった。以下、「パワハラ行為者が役職者・年長者・キーマンで指導が難しい」が30.6%、「担当者の負担増」が28.3%、「相談者が不利益になる」が28.1%、「行為者の情報が社内に漏れる」が19.7%と続いた。一方、「“社外に”パワハラ相談窓口を設けるメリット」について尋ねると、「専門のカウンセラーに任せられる」が42.5%で最も多くなった。以下、「第三者機関のため相談しやすい」が41.6%、「役職者・年長者・キーマンにも指導してくれる」が33.7%、「担当者の負担が大幅に軽減される」が25.5%、「プライバシーが遵守される」が22.8%となった。
パワハラ行為確認後は「パワハラ行為者への措置」が上位に
続いて同社は、「パワハラの事実確認後、行った措置」について尋ねた。すると「行為者の始末書提出、口頭注意など」が38.6%で最多となった。以下、「行為者の配置転換・移動」が32.3%、「行為者の減給や降格」が24.1%、「被害者のメンタルヘルスケア」が21.1%と続いた。問題解決に向けては「行為者の自覚不足」や「被害者への配慮不足」などが課題か
最後に、「パワハラが確認された事例がある」と回答した人に「対策を講じて問題が解決したか」を尋ねると、「はい」が79.8%、「いいえ」が20.2%となった。さらに、「いいえ」と回答した人に「解決しなかった理由」を尋ねると、「行為者に自覚がない」が53.5%、「調査の結果パワハラの事実が判定されなかったが、被害者がパワハラを感じている」が28.9%、「行為者が重要ポストにあるため異動などの措置ができなかった」が21.4%、「被害者へのサポートが不十分だった」が19.5%、「被害者を配置転換したが、不満や不服があった」が17%となった。
「パワハラ防止法」適用後も、相談窓口の設置などにおいては比較的小規模の企業で対応の遅れが懸念される。また、社内に相談窓口を設置したものの、被害者の情報漏えいや行為者の属性などの要因から、運用が難しいといった課題があることもわかった。社内外での相談窓口の設置にはそれぞれにメリット・デメリットがあることを踏まえ、設置の検討を進めてみてはいかがだろうか。