株式会社帝国データバンクは2022年9月8日、「“物価高倒産”動向調査」の結果を発表した。調査では2018年1月~2022年8月までのデータを検証し、物価高を要因とした倒産発生件数の推移などの分析を行っている。本調査から、物価高のあおりを受ける産業の動向や、今後の物価高倒産の見通しなどが明らかとなった。
2022年8月時点の「物価高倒産」は累計150件。すでに調査開始以降の年間最多を更新
昨今の原油・燃料など原材料の価格高騰による仕入れ価格上昇や、取引先からの値下げ圧力によって価格転嫁ができない「値上げ難」などを要因として、収益が維持できずに倒産する「物価高倒産」がここへきて急増しているという。帝国データバンクによると、本調査の対象期間である2018年1月から2022年8月までに判明している「物価高倒産」は累計で592件に達したといい、そのうち2022年1月~8月においては累計150件と、年間の倒産件数では過去5年間で最多だった2021年の138件を既に大幅に上回っている。
また、8月単月では34件の物価高倒産が判明し、月間最多だった前月の31件を上回って2ヵ月連続で最多を更新している。さらに、前年同月比では約2.6倍に急増していることもわかった。これらの数字は、帝国データバンクによる個別取材の中で倒産が判明したケースのみを集計したもので、実態としてはさらに多方面に物価高の影響が拡大している可能性が高いという。
「運輸業」の倒産件数が最多。物価高の影響を受ける中小・零細企業が多い傾向に
業種詳細別の倒産件数を見ると「運輸業」が42件でトップとなり、全体の約3割を占めた。以下、「総合工事」が19件、「飲食料品製造」が13件、「飲食料品卸売」と「職別工事」がともに10件、「飲食料品小売」が8件と続いた。この件数を受けて同社は、「長らく続いた倒産件数の減少基調から一転し、“底打ち感”が鮮明になってきている」としている。円安の急速な進行で「物価高倒産」は年末にかけてさらに増加する可能性も
また同社によると、「値上げ難が課題となる一方で、各業界においては価格転嫁を目的とした『値上げ』や『再値上げ』に踏み切る動きも広がりつつある」という。しかしその一方で、価格を据え置く他社との競争激化で売上が減少するリスクをはらんでいることから、先行きは楽観視できない状況とのことだ。また、円安が進行している状況を受け、同社は物価高の影響が今後さらに本格化すると見込んでおり、例年企業倒産が相次ぐ年末にかけて、物価高倒産はさらに増加すると懸念している。こうした中、政府は2022年9月9日に「物価・賃金・生活総合対策本部」を開催し、今後中小企業の価格転嫁の円滑化に向けた施策を進めていく見通しを立てた。自社の事業存続のために、企業側は今後も適正な価格転嫁が可能となるよう、取引先や関係先と協議を続けていく必要があると言えそうだ。