株式会社パーソル総合研究所は2022年9月5日、「賃金」に関する調査結果を発表した。調査期間は2022年5月27日~31日で、対象者は、全国で組織や企業に所属する18歳~69歳の就業者13,745名および、企業の経営層(社長もしくは役員)の530名、合計14,275名となっている。調査から、就業者の賃金に関する実態や経営層の賃上げに対する意識などが明らかとなった。
昨年比での賃金増加は「非正規雇用者」より「正規雇用者」が多い結果に
急速な円安に伴う物価高で、生活への不安を抱える人が増加している今、企業による賃上げが急務となっているが、実態はどうなのだろうか。パーソル総合研究所は、まず2021年と比較した「賃金の増減」を雇用形態別に尋ねた。すると、「賃金が増加した」とする割合は、「正規社員・職員」が44.6%、「パート・アルバイト」が33.5%、「派遣社員」が27.8%、「会社・団体役員」が23%となった。「年収の高さ」と「賃金増加率」に相関性か
また、業種別の「平均年収」と「賃金増加者の比率」の分布を見てみると、「情報通信業」では平均年収・賃金増加率ともに高い傾向にあることがわかった。一方で、「宿泊・飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」は、平均年収・賃金増加率ともに少ない傾向が明らかとなった。「正規雇用」では高年収層の賃金増加率が高い一方、「非正規雇用」では逆の傾向に
さらに年収階層ごとの「前年比での賃金増減割合」を見ると、「正規雇用」では、「100万円~200万円未満」から「500万円~700万円未満」の年収階層において、年収が高い層ほど賃金の増加率が高くなった。
一方で、「非正規雇用」では「100万円~200万円未満」から「500万円~700万円未満」の年収階層において、年収が低いほど賃金増加率が高くなった。
経営層の6割が「賃上げには会社の成長が必要」との認識。「賃上げは投資」との考えも
また、経営層503名に対して「賃上げに対する考え」を同研究所が尋ねると、63%が「会社の成長なくして賃上げは困難」と回答し、「賃上げなくして会社の成長は困難」の6.4%を大幅に上回った。一方で、「賃上げは投資だ」は38.1%で、「賃上げはコスト増だ」の18.5%を19.6ポイント上回った。さらに、「国は賃上げに関与すべき」との考えを持つ経営層は22.6%、「関与すべきではない」は28.1%だった。「予算達成度と業績の良し悪し」が賃上げ検討の要素とする経営層が最多に
最後に、同研究所が「賃上げの判断に影響する要素」を尋ねた。すると「予算達成度や業績の良し悪し」が40.6%で最多だった。以下、「従業員の離職抑止」が29.4%、「景気動向」が27.9%、「物価動向」と「優秀人材の採用強化」がともに23.9%、「同業者の動向」が15.2%と続いた。一方、「政府の要請」(8.1%)や「経団連の方針」(3%)、「連合の方針」(1%)などの回答率は低い結果となった。
本調査では“賃上げの実態”として、業種や年収階層によって賃上げの実態に格差が生じていることが明らかとなった。賃上げには企業の成長が欠かせないとする見方もある中、パーソル総研の主任研究員の古井伸弥氏は「企業の成長を待っていては、賃上げは進まない」と企業主導での賃上げ推進への課題感をにじませる。今こそ国と企業が一体となり、賃上げに取り組む必要があるだろう。