エッグフォワード株式会社は2022年7月21日、「人的資本開示に関する上場企業の実態調査」の結果を発表した。調査期間は2022年6月21~22日で、上場企業の経営者・役員・経営企画・IR担当に準ずる104名から回答を得た。調査では、「上場企業における人的資本の情報開示」の推進状況と現状の課題が明らかとなった。
「人的資本に関する情報開示」を認知する企業は8割強に
2022年3月、「ISO 30414」の国内初となる認証を株式会社リンクアンドモチベーションが取得したことが報じられ、国内でも「人的資本開示」への注目度が高まっていると考えられる。そうした中、国内の上場企業では、「人的資本開示」にどの程度取り組んでいるのだろうか。はじめにエッグフォワードは、「米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に“人的資本に関する情報開示”を義務化したことを知っているか」を尋ねた。その結果、「知っている」が82.7%、「知らない」が17.3%となった。約9割が「今後、日本でも人的資本開示の必要性が高まる」と考えている
続いて同社は、「人的資本を開示するという考え方について、今後日本でも必要性が高まると思うか」を尋ねた。すると、「非常にそう思う」が45.2%、「ややそう思う」が42.3%で、合計が87.5%となった。一方で、「あまりそう思わない」は7.7%、「全くそう思わない」は1.9%で、合わせて9.6%だった。約7割が「無形資産が重要視されるようになった社会的背景」に注目か
「人的資本の情報開示の考えが必要となる」と回答した人に、「なぜそう思うか」を尋ねると、最も多かったのは、「(企業価値の指標が)有形資産(モノ・カネ)から無形資産に移行しているから」で68.1%となった。以下、「ESG投資の重要性が高まっているから」が58.2%、「経営戦略と人材戦略の連動が重要だから」が49.5%、「企業の中核人材における多様性の確保が求められているから」が35.2%と続いた。その他の自由回答では、「企業価値の見方が変わってきているため」や「AIが進歩しても人が主役になる場面が増えると思うから」、「より透明性を高めるため」などの声があった。
「人的資本の情報開示」に取り組む企業は6割に
さらに、「勤務先の企業では、人的資本の情報開示に取り組んでいるか」と質問すると、「既に取り組んでいる」は60.6%、「取り組んでいないが、予定している」は25%、「予定をしていない」は14.4%となった。「人的資本開示」に取り組む企業(予定含む)の9割が課題を感じている
続いて同社は、「人的資本の情報開示」に「既に取り組んでいる」もしくは「取り組んでいないが、予定している」と回答した人を対象に、「取り組みを進める上で課題を感じているか」を尋ねた。すると「非常に感じる」が42.7%、「やや感じる」が51.7%で、合計94.4%となった。人的資本開示の取り組みを推進する企業の大多数が、課題を感じているという実態が浮かび上がった。「人的資本開示」推進企業が感じている課題とは?
先の質問で「課題を感じている」とした人に、「具体的にどのような課題を感じているか」を尋ねると、「具体的な進め方がわからない」が53.6%でトップだった。以下、「社内データの集め方がわからない」が45.2%、「手探り状態で正解がわからない」が42.9%、「重視されている指標がわからない」が38.1%、「優位性や差別化につながる指標がない」が34.5%などと続いた。その他の課題として、自由記述では「効果的な方法がわかりにくい」や「同業他社の取り組みがわかりにくい」、「量的指標よりも質的側面をどのように伝えるか」、「確認すべき指標がはっきりしない」などがあった。
本調査では、回答企業のうち約9割は「人的資本の情報開示を推進する必要性」を感じており、既に取り組みを進める企業は6割と過半数を占めていた。一方で、推進企業の半数以上は「具体的な進め方がわからない」と回答した実態を踏まえると、国内の上場企業における「人的資本の情報開示」に向けた取り組みは、まだ始まったばかりであると推測できる。今後も国内企業の人的資本開示への取り組み状況を注視していきたい。