株式会社資生堂は2022年6月21日、慶應義塾大学先端生命科学研究所(以下、慶大先端生命研)と包括連携協定を締結したと発表した。同社は本協定で、慶大先端生命研とともにこれまでにない研究アプローチや人材交流を推進し、イノベーション創出を目指すとともに、従来の枠にとらわれない研究開発リーダー人材の育成を目指すという。
先端技術を活用した研究人材育成で地域社会活性化も視野に
資生堂はこれまで、「人材は会社の最も大切な資産」であるという「PEOPLE FIRST」の考えのもと、“強い個”による組織作りのため、人材育成への積極的投資を行ってきた。また、企業の持続的成長のためには革新的なイノベーションが必要不可欠だとし、2021年には研究開発強化を目的として、独自の研究開発理念を制定。5つの研究アプローチを柱に、世界中の研究員の能力を最大限に発揮させ、イノベーションを加速させることに取り組んでいる。今回、資生堂と協定を結んだ慶大先端生命研は、最先端のバイオ研究を行いつつ、失敗を恐れず果敢に挑戦する研究者の育成に注力している。また、同研究所が立地する山形県庄内地方での活発な産官学連携を行っているという。
資生堂は、本協定締結に先立つ2021年11月、自ら学術領域を生み出し、教育者としても優れた実績を持つ慶大先端生命研所長の冨田勝教授とアドバイザリー契約を締結。横浜・みなとみらいに位置する「資生堂グローバルイノベーションセンター」(以下、GIC)内に、「GIC 冨田研究室」を設置した。同研究室では、富田教授の直接指導による既存の考え方やルールにとらわれない方法での革新的なイノベーション創出や、研究開発組織における新たな文化醸成と人材育成強化に向けた試みを続けてきたという。これらのことを踏まえ、同社はイノベーション創出やイノベーション研究を担う人材育成をさらに加速させるべく、包括連携協定を締結した。
同協定のもとでは、両者が以下の内容を共同で実施していく方針だ。
●慶大先端生命研への長期派遣を含む、未来型イノベーションをリードする人材育成
●先端技術を活用した研究活動・社会実装推進
●地域社会活性化を目的とする共同の取り組み
まず、社内公募により選抜した研究員2名を、慶大先端生命研に派遣するとしている。本協定で派遣された研究員は「GIC冨田研究室」との連携で未来型イノベーションに取り組むほか、自主的な産官学民連携などを通し、将来のリーダー人材となることを目指していくという。
さまざまな企業で人材育成の取り組みが活発化する今、研究開発領域においても産官学連携による技術力の底上げは必須の課題だろう。本取り組みは同領域の人材育成におけるイノベーション創出の好例として参考になるかもしれない。