電通らが「NFT型共創アプローチ」実証実験を開始。市民の環境活動の実績可視化・報酬付与により活動促進を図る世界初の試み

株式会社電通グループは2022年7月1日、電通が推進役の一端を担う環境DAO(分散型自律組織)「つながループ」(注1)において、エコ活動を行う市民コミュニティの活動実績に対して、“「NFT型コレクティブ・クリエイティブ」(注2)の手法が共創の促進に有効か”を検証する実証実験を行うと発表した。本実証実験にはWeb3.0(注3)技術が用いられ、市民コミュニティをWeb3.0技術と親和性の高い「環境DAO(分散型自律組織)」に見立てるアプローチの有効性を検証する、世界初の取り組みだという。なお、本実証実験は電通インターナショナル・米州、シビラ株式会社、ソニー株式会社、株式会社ファイアープレイスと共同で、2022年6月~12月末までの期間で実施される予定だ。

エコ活動で完成した「アートNFT」をオークションに出品し、活動参加者に金銭報酬

電通グループはこれまで、Web3.0時代におけるコミュニティの求心力とミッション実行力を高めるためのアプローチ仮説である「NTF型コレクティブ・クリエイティブ」の設計を進めてきた。また同社は、企業などが主導しない市民有志による環境貢献活動において、個々の貢献実績が可視化されにくいことや、経済的な見返りが乏しいことによる、エコ活動の規模および継続性における課題を感じてきたという。

こうした中、電通グループは本実証実験において、「NTF型コレクティブ・クリエイティブ」の手法を用いたエコ活動における個々の実績の可視化などを通じ、コミュニティの力を活用して課題解決に取り組むことを目的とするほか、市民コミュニティの参加者それぞれが、エコ活動による金銭的な報酬を得られる仕組みを構築している。

具体的には、「つながループ」の参加者が日々のエコ活動を行うことで、パズル型のNFTを1ピースずつ獲得していき、コミュニティ全体で規定のピース数を集められると、一枚の絵が完成する仕組みだ。完成した絵は「コミュニティで約180kgの生ごみを削減した」ことの証明書となるほか、アート作品としての側面も持ち合わせている。そのため、エコ実績で得られたアートNFTはオークションに出品され、落札された価格は参加者の活動実績に応じ、金銭的な報酬として分配される。

実証実験に用いられるNFTについては、技術的な有用性が確認されているシビラのNFT用コントラクトウォレット「unWallet」と、ソニーのICカード型ハードウェア・ウォレットを採用。unWalletとハードウェア・ウォレットを組み合わせることで、参加者はICカードをかざすだけで、パブリックチェーン上のNFTへのアクセスおよび電子署名が可能になるなど、ITに不慣れな利用者にも使いやすいものとなっているという。

また、実験の参加者に配布されるICカード型ハードウェア・ウォレットは、DAOの会員証としても活用できる。会員証としてのハードウェア・ウォレットを、ファイアープレイスが運営する川崎市内の協力店舗「ロックヒルズガーデン」の店頭に設置されるスマートフォンにかざすだけで、NFT獲得者限定イベントへの参加が認められるという。これにより、参加者に対してリアルな場でのコミュニケーションの機会を与えることも可能としている。

電通グループ、シビラ、ソニーの3社は、本実証実験後に事業化の検討を進めていくとしている。環境課題に対し、市民個々人がより主体的なエコ活動に取り組めるよう、多様なインセンティブの提供や、コミュニティ形成促進が可能になる社会の実現を目指す考えだ。
電通らが「NFT型共創アプローチ」実証実験を開始。市民の環境活動の実績可視化・報酬付与により活動促進を図る世界初の試み
本取り組みは、個々が行う環境への取り組みを企業が支援し促進するものとなっている。クリエイティブな発想や、ゲーム感覚で参加できる仕組みが構築されており、参加意欲も高まりそうだ。今後の実証実験の経過および結果に注目していきたい。