株式会社パーソル総合研究所は2022年5月23日、「企業の新規事業開発に関する調査結果」を発表した。調査期間は2021年10月28日~11月4日で、新規事業開発を実施する企業の正社員13,816名から回答を得た。回答者のうち、従業員規模300名以上の企業で新規事業開発を務める担当者(専任または兼務)は1,800名となる。調査結果から、新規事業の成功度や現在の進展度、および新規事業開発における人事部の関与の実態が明らかとなった。
全体の3割が「新規事業開発に成功している」と回答
VUCAの時代が到来する中、企業が新規事業開発に注力する動きが加速している。その一方で、既存事業推進とは異なる「新たな課題」に直面する企業も多いようだ。パーソル総合研究所が実施した今回の調査では、新規事業開発を行う担当者を対象に、その実態を尋ねている。まず、「新規事業開発の成功度」を問うと、「非常に成功している」が2.3%、「どちらかというと成功している」が28.2%となり、合計30.6%となった。一方、「全く成功に至っていない」は9.5%、「あまり成功に至っていない」は26.9%で、計36.4%となった。新規事業開発が成功している企業は、全体の3割程度であることが判明した。
取り組む企業の4割が「将来の主力事業になりうる事業が生まれている」と評価
さらに、「新規事業の進展度」を尋ねたところ、“将来自社の主力事業になりそうな有望な新規事業”が「多数生まれている」(5.4%)、もしくは「数件生まれている」(34.7%)と回答をしたのは、合計40.1%だった。また、「小粒な新規事業のみが生まれている」とした回答のうち、「数件生まれている」が25.3%、「多数生まれている」が15.3%で、合計40.6%となった。
新規事業開発担当者の約4割が「担い手となる人材確保の難しさ」を課題に挙げる
続いて、同研究所は「新規事業開発者が感じている組織マネジメントの課題」を尋ねた。その結果、「担い手となる人材の確保が困難」が38.9%で最も多くなり、以下、「知識・ノウハウが不足」が38.6%、「意思決定が遅い」が30.7%、「評価制度の不適合」が30.5%と続いた。一方、「経営層の関与が弱い」(13.2%)、「担当者の士気が低い」(11.4%)などは全体の1割程度に留まり、課題感が弱い要素と言えそうだ。
新規事業開発に人事部が積極的に関与している企業は3割強
また、「新規事業開発に対する人事部の関与度」を聞くと、「積極的」が7.7%、「どちらかというと積極的」が25.6%となり、合計33.2%となった。
また、「人事部の関与の効果」について尋ねると、「効果的」が16.2%、「どちらかというと効果的」が54.4%で、合計70.7%だった。
人事施策のあり方について、「新規事業開発担当者」と「人事部管理職」の間に認識の差も
同研究所は続いて、「新規事業開発者」と「人事部管理職」それぞれに対し、「新規事業開発を成功させるために強化すべき人事施策」について尋ねている。すると、新規事業開発担当者の回答は、1位が「上長の理解やサポート促進」(47%)、2位が「挑戦的な取り組みを推奨・評価する人事評価制度」(38.8%)となった。一方で、人事部管理職では、1位が「新規事業に適した人材の採用」(33.7%)、2位が「上長の理解やサポート促進」(31.6%)となった。また、新規事業開発担当者では2位にあがっていた「挑戦的な取り組みを推奨・評価する人事評価制度」が、人事部管理職では6位に後退するなど、“強化すべきと考えている人事施策”にギャップが生じているようだ。
調査結果から、新規事業開発における「組織マネジメントの課題」と、新規事業を成功に導くための「人材マネジメントの重要性」が示された。新規事業開発にあたっては、開発担当者と人事部門、経営層の足並みがどの程度揃っているのかを確認してみるのもいいのではないだろうか。