株式会社日本M&Aセンターは2022年4月19日、「ITソフトウェア業界の経営に関する意識調査」の結果を発表した。なお、調査は新型コロナウイルス感染症拡大以降の2020年より毎年実施されており、今回が第3回調査となる。調査期間は2022年2月1日~28日で、ITソフトウェア業界の経営者67名から回答を得た。本記事では、結果を経年で比較しながら紹介する(日本M&Aセンター調べ)。
経営課題の上位は「技術力不足」と「営業力不足」
ITソフトウェア業界では、コロナ禍以降、どのような経営課題に直面しているのだろうか。はじめに、同社が「現在の経営課題」を尋ねたところ、1位は「技術者不足」が69%で、2位は「営業力不足」が54%となった。この2項目は、過去2回の調査でも同順位となっており、依然として深刻な課題となっているようだ。
技術者の人材不足は業界全体の課題で、事業運営にも影響が及ぶ
次に、同社は「技術者の採用に関する課題」を尋ねたところ、トップは「技術者の人数不足のために、受注を控えたことがある」で40%となった。2位は「採用は非常に厳しく、全く採用活動が進んでいない」で37%となっており、過去2回の結果(いずれも25%)を12ポイント上回って大きく数字を伸ばした。これにより、人員不足を課題として認識しつつも、思うように採用ができていないという現状が浮き彫りとなった。コロナ禍以降、業績悪化が年々顕在化している傾向
さらに、「新型コロナウイルスに伴う業績への影響」を問うと、今回最も多くの回答を集めたのは、「業績が大幅に悪化している」で29%だった。経年で見ると、この項目は第1回調査、第2回調査と次第に割合を増しており、業績の悪化は年々進行してきていることがうかがえる。2位は「現状では影響がないが(又は軽微だが)、今後影響が出てくる可能性がある」で23%が回答した。コロナ禍での成長戦略、新規事業から既存事業の注力へシフトか
最後に、同社は「業績がコロナショック前以上に成長するために何が必要か」を尋ねた。1位は、「Withコロナ、Afterコロナを見越して、新しい事にチャレンジをする」が39%で、第2回結果からは18ポイント数字を下げた。一方、2位の「従来の事業をとにかく伸ばすことを考える」は34%となり、第2回の結果から18ポイント数字を伸ばした。これらの結果を踏まえると、企業が今後の成長を目指すために、「新規よりも既存事業へ注力する動き」があることがうかがえる。
経済産業省の試算によると、IT人材の不足は2030年に約79万人(※)に拡大する可能性か゛あると公表されている。社会的にIT人材の不足が叫ばれる中、ITソフトウェア業界でも「技術者の人材確保」は大きな経営課題となっており、またコロナ禍の影響で業績が悪化する企業も増えていることが明らかとなった。この現状を踏まえつつ、自社のIT活用の高度化や、DXの推進計画を考える必要があるだろう。