株式会社iCARE(以下、iCARE)は2022年1月19日、「健康データに関する活用の実態調査」の結果を発表した。調査時期は2021年12月で、人事・産業医・産業看護職・心理職・福利厚生担当者など、企業の健康管理担当者192名から回答を得た。これにより、健康データの活用状況や、課題等が明らかとなった。
9割以上が「健康データを活用したい」と回答
経営重要指標との関連性が指摘される「健康経営」だが、「健康診断結果」、「ストレスチェック結果」、「勤怠情報」、「パルスサーベイ情報」、「専門家面談記録」、「業務歴」などの健康データは、企業において十分に活用されているのだろうか。まず、iCAREが「健康データを積極的に活用していきたいか」と尋ねると、「積極的に活用したい」が70.94%、「多少なりとも活用したい」が25.64%となり、合わせて96.58%が「活用したい」と回答した。
実際に「データを活用できている」企業は2割に届かず
「健康データの管理・利活用の状況」についての質問では、「部分的な連携で、多くは統合管理されていない」が35.04%、「個別データが散在し、全く連携できていない」が24.79%などと、多くの回答が集まった。一方で、「一元化されており、分析に使われている」は10.26%、「一元化・分析に加え、施策も実施している」は8.55%にとどまるなど、データが存在していても、連携や活用に課題があることがうかがえる結果となった。
健康データの分析方法は「Excel」が半数を超える。高度な解析を実施する企業は少数か
続いて、「健康データが一元化されており、分析に使われている」とした担当者に、「その方法」を尋ねると、「Excel」が57.6%で半数を超える結果だった。次いで、「外部業者への委託」が27.3%となり、自社での分析を行わない企業も一定数あることがわかった。
また、「一元化・分析に加え、施策も実施している」と回答した担当者に「その方法」を尋ねた質問でも、「Excel」が52.6%と半数を超えた。以下、「プログラミング言語」および「Webアクセス解析」が共に10.5%、「BAツール」が5.3%などとなった。データの利活用が進んでいる企業においても、高度な分析手法を利用している割合は少数であることがわかった。
人事総務担当のデータ活用目的は「組織開発」、産業医や看護職は「健康施策立案」か
さらに同社は、「人事総務担当者」、「産業看護職」、「産業医」それぞれに、「データ活用の目的」と「活用促進に向けて実施したい施策」について聞いている。その結果、「活用目的」では、人事総務担当者は「組織開発と改善」が最も多かったのに対し、産業看護職および産業医では「健康施策の立案」がトップとなった。人事総務担当者は、より上流の目的に対してデータ活用を促進させたいと考えていることがうかがえる。また、産業看護職では、「経営会議などの報告」が3位となった。これに対し同社は、「明確な定量目標を策定することが難しい部門で、データを利用して活動価値を経営層に伝えていく重要性が高い」との見解を示している。
一方、「データの活用促進に向けた施策」については、「業務プロセスの改善」がいずれの職種でも1位となった。データ活用を進めるために、「まずは時間の確保が急務」と考える担当者が多いことがうかがえる。
「健康データの活用」を進めたいと考える企業は多いものの、分析方法や施策の検討・実施に至るまでには、多くの壁があることがうかがえる。未対応の企業では、まずは他社の方法やツールなどを参考にしながら、可視化しづらい「健康」の見える化に取り組んでみてはいかがだろうか。