Institution for a Global Society 株式会社(以下、IGS)は2022年1月11日、「リモートワーク下のコミュニケーションに関するアンケート調査」の結果を発表した。調査期間は、2021年12月17日~24日および同年12月28日~30日。従業員数1,000人以上の大企業に勤務しており、新型コロナウイルス感染症拡大下でリモートワークを始めた若手社員205名および上司427名から回答を得た。これにより、コロナ禍で広まるリモートワーク下における、上司・部下間のコミュニケーションの状況や課題などが明らかとなった。
若手社員の4割がコロナ禍で「転職を検討」の経験あり。「成長に対する不安が強まった」との声も
コロナ禍でのリモートワークの普及による、上司・部下間のコミュニケーションの変化は、両者の意識にどのような影響を与えているのだろうか。まずIGSが、部下側である若手社員に向け「コロナ禍以降、転職を検討した経験があるか」を尋ねると、42.4%が「はい」と回答した。4割を超える若手部下が、コロナ禍以降に転職を検討した経験があることがわかった。
続けて同社は、若手部下に「コロナ禍以前と比べ、仕事する上で自己の成長に対する不安を感じるか」を尋ねている。この回答を「コロナ禍以降に転職を検討した経験」の有無別に見てみると、「転職を検討した」と回答した若手部下のうち、36.8%が「コロナ前よりも強く不安を感じている」ことがわかった。転職を検討した経験がない若手部下においては、同回答が18.6%と約半数にとどまっていることからも、「転職の検討」と「成長に対する不安」は関連があることが予測される。
「上司とのコミュニケーションのしやすさ」が若手の「成長に対する不安」に影響か
さらに同社は、若手部下に対し「コロナ禍以降の職場でのコミュニケーションの変化」を尋ねている。そのうち、「上司との意思疎通のしやすさ」と「上司との率直な意見交換のしやすさ」についての回答を、「コロナ前と比べ、自己の成長に対する不安が増えた人」と「減った人」で比較した。すると、「上司との意思疎通のしやすさが増した」と回答した割合は、「不安が減った人」が53.3%、「不安が増した人」が7.4%と、「不安が減った人」の方が45.9ポイントも高くなった。また、「上司との率直な意見交換のしやすさが増した」と回答した割合は、「不安が減った人」が46.7%、「不安が増した人」が11.1%と、こちらも「不安が減った人」の方が35.6ポイント高くなった。これらの結果から、「自己の成長に対する不安」の増減に、上司との意思疎通や意見交換のしやすさが関連していると予測できる。
5割以上の上司が「部下との率直な意見交換が減った」と認識
一方、同社は上司に対しても「コロナ禍以降の職場でのコミュニケーションの変化」について尋ねている。すると、「部下との率直な意見交換のしやすさ」について「減った」という回答が50.8%、「部下との意思疎通のしやすさ」について「減った」という回答が46.1%となった。リモートワーク下で、「部下とのコミュニケーションが減った」と認識している上司は少なくないようだ。「上司側のコミュニケーション」に関する意識は、部下と上司間で差も
また、同社は上司に「コロナ前と比べて、部下とどのようにコミュニケーションしているか」を、若手部下に「コロナ前と比べて、上司の様子をどう感じているか」をそれぞれ尋ね、その結果を比較している。すると、上司の「部下と対話的に話すようにしている」に対し「当てはまる」とした回答(36.3%)に比べ、部下の「上司は、コロナ前よりも対話的に話してくれている」に対し「当てはまる」とした回答(16.5%)は19.8ポイント低かった。その他、同様に上司の回答より部下の回答が低かった項目として、「上司は、コロナ禍前よりも明るく見える」で16ポイント、「上司は余裕をもってコミュニケーションしている」で13.4ポイント、「上司は落ち着きながらコミュニケーションしている」で10.7ポイント、それぞれ差がついた。上司と部下の間で、上司側のコミュニケーションに対する意識にも差があることがわかった。
本調査の結果から、リモートワーク下での「上司とのやり取り」が、若手部下の不安や離職意識に少なからず影響を与えていることがうかがえた。多様な働き方が推進される中、リモートワーク下における上司のコミュニケーション能力を向上させることは、もはや経営課題の一つにもなり得るだろう。