アデコ株式会社は2021年12月22日、コロナ禍のエンゲージメントに関する調査結果を発表した。調査期間は2021年8月17日~18日で、全国のビジネスパーソン(会社員、公務員および団体職員)、計2,000名から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症拡大以降の「職場」や「上司」、「仕事」に関する実態が浮き彫りとなった。
3割が「勤務先との結びつきが弱くなった」と回答
新型コロナウイルスの流行によって、人々の働き方や生活への価値観が変容するなか、会社と個人の結びつきを表すエンゲージメントは変化しているのだろうか。最初にアデコは、「2020年4月以降の、勤務先や上司・同僚との結びつきおよび自身の熱意の変化」について質問した。すると「会社/組織・経営層との結びつき」、「上司との結びつき」、「同僚との結びつき」、「仕事に関する熱意」の4項目とも、「変わらない」と回答した人が約半数だった。
反対に、4項目に対して3割以上が「弱くなった」(「とても弱くなった」または「やや弱くなった」の合計)と回答。うち、「仕事に対する熱意」に関しては、計36.2%が「弱くなった」答え、他の項目より高くなっていた。
過半数が「勤務先企業のビジョンに共感を覚えていない」
続いて、「現在勤務している企業・団体との関係」に関して、「この会社/組織に貢献したいと思うか?」を聞いた。すると、計63.2%が「そう思う」と肯定的な意見を示した。他方で、「友人や知人にこの会社/組織を薦めたいか?」を尋ねると、「そう思わない」は計62.3%だった。この他、「そう思わない」という回答割合が5割を超えていたのは、「この会社/組織のビジョンに共感していていない」(計55%)と「自分のライフビジョンおよびキャリアビジョンと、会社/組織のビジョンとの繋がりを意識できていない」(計58.9%)という結果だった。
注力したい課題は、上司からメンバーへの「フィードバックの不足」
「現在の上司との関係」に関して、「上司は自分のことを気にかけてくれている」や「自分に対する上司の評価に納得している」など8項目について、“自身の考えにもっとも近いもの”を尋ねた。その結果、「そう思う」(「とてもそう思う」と「ややそう思う」の合計)の回答割合は、全ての項目で4割以上だった。全体結果からは、比較的良好な関係が築けていることがうかがえた。一方で、「上司から建設的なフィードバックを得ている」および「上司から適切なタイミングでフィードバックを得ている」の2項目は、「そう思わない」(「あまりそう思わない」と「まったくそう思わない」の合計)の回答割合が、共に5割を超えていた。上司からメンバーへのフィードバックに関して、課題がある職場が多いようだ。
6割以上が「キャリアの展望が描けない」と感じている
最後に、「現在の仕事」に関し、「自分の能力を活かすことができている」や「今の仕事は自分に向いている」など11項目について、自身の考えに近いものを尋ねた。「そう思う」(「とてもそう思う」と「ややそう思う」の合計)が半数を超えたのは、「自分が何を期待されているか理解している」(57%)、「今の仕事は自分に向いている」(56.9%)、「自身の能力を生かすことができている」(54.1%)、「仕事を通じて顧客や社会に価値を生み出している」(50.4%)の4項目だった。他方で、「そう思わない」(「あまりそう思わない」と「まったくそう思わない」の合計)が半数を超えたのは、「今後のキャリアに関する展望が描けている」(62.3%)と、「良い仕事をするための設備や環境が整っている」(51.2%)の2項目となった。
コロナ禍以降、仕事への熱意や考えが変化したビジネスパーソンは、一定数いることが浮き彫りとなった。従業員が愛着を持ち、熱意を持って働けるような組織にするためにも、企業は従業員エンゲージメント調査などを通じ、自社の現在の状態を把握しておく必要がありそうだ。