野村アセットマネジメント株式会社(以下、野村アセットマネジメント)は2022年2月18日、運用対象としている日本企業のESG評価で使用する「ESGスコア」について、温室効果ガス排出量の評価項目として、新たに「温室効果ガスの吸収量」を反映すると発表した。国内の資産運用会社で「温室効果ガス吸収量」を評価に組み込むのは、同社が初めてのことだという。同社は機関投資家の責務として、ESG課題の解決に取り組んでいく意向だ。
国内でも注目が高まるESG投資。企業からの要望に応え「吸収量」の項目を追加
従来の財務情報に加えて、「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「ガバナンス(Governance)」の要素も考慮した投資であるESG投資は、“企業経営のサステナビリティを評価する”という概念が普及したことを背景に、日本でも注目を集めている。こうした背景から、野村アセットマネジメントではこれまでも、同社のESGスコアにおいて、「環境」、「社会」、「ガバナンス」、「SDGs」の観点から約100項目にわたる企業の非財務情報を調査・分析し、ESGを考慮した企業価値の評価を実施している。これらの評価項目は、毎年見直しが行われ、運用ポートフォリオにおける投資判断や新規の商品開発に加え、顧客への報告などにも活用しているという。
気候変動問題緩和のための取り組みである「温室効果ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)」は、“温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた総和をゼロにする”ことを意味し、企業が最大限の削減努力をしたうえでなお残ってしまう「残余排出量」については、吸収量を活用する必要があるとされている。
「温室効果ガスの吸収量」の評価項目への追加は、温室効果ガスの吸収活動に積極的に取り組み、その吸収量を開示している企業から、「吸収量を評価に組み込んでほしい」という要望を受けて決定したものだ。日本企業を対象とする「ESGスコア」のうち、温室効果ガス排出量の評価項目において、排出量から企業の開示した温室効果ガス吸収量を控除したうえで評価を行うよう改定するという。なお、この温室効果ガス吸収量には、森林やCCUSなど、大気中から直接温室効果ガスを吸収する「除去量」、自社の技術・製品・取り組みなどにより削減に貢献した「削減貢献量」、カーボン・クレジットによる「オフセット量」などが含まれるとしている。
持続可能な企業活動に対して投資を行う「ESG投資」が浸透することで、その評価項目においても徐々に改訂が重ねられ、精度の高いものになっていくことが予想される。投資家から選ばれる企業であるためには、企業の責任として環境負荷への対応に取り組んでいく必要があるだろう。