高知県は、大都市の企業経営者等を対象に実施した「企業の地方進出に関する調査」の結果を発表した。調査時期は2021年9月で、東京都・大阪府・愛知県にある企業の経営者および役員200名と、従業員200名の合計400名から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症の流行を経て、地方への企業進出や就業に対する考えがどのように変化しているかが明らかとなった。
コロナ禍前は7割の人が「リモートワークはできない」と考えていたことが判明
まず、県は本調査で、「2020年2月以前(新型コロナウイルスの流行以前)は、仕事柄上、リモートワークはできないと思っていたか」と尋ねている。すると、「できないと思っていた」が70%、「できると思っていた」が30%という結果に。7割がリモートワークは実現不可能と考えていたようだ。「現在のリモートワーク状況」については、「コロナ禍前もしていて、現在もしている」が10.3%、「コロナ禍前はしていないが、現在はしている」が34%となり、現在リモートワークを行っている人は、合わせて44.3%となった。
コロナ禍を経て4割以上が「地方移住・地方勤務」をポジティブに捉えている。20~30代では半数以上
「コロナ禍を経て、地方に住むことや働くことにポジティブな気持ちになったか」との質問には、「そう思う」と「どちらかというとそう思う」を合わせて、「そう思う」との回答が40.3%となった。中でも、20代は54.2%、30代は51.5%が「そう思う」と回答しており、若い世代では半数以上が地方移住や就業にポジティブな気持ちを抱いていることがわかった。「地方移住に対する意識」については経営者と従業員の間でギャップも
続いて、経営者・役員に対して「現場のスタッフが、地方で働きたい気持ちがあると思うか」と尋ねている。すると、「そう思う」(5.5%)、「どちらかというとそう思う」(15%)を合わせて、5人に1人となる20.5%が「そう思う」と回答した。一方、実際に地方で働くことに対してポジティブな気持ちを抱いている従業員は、「そう思う」(10.5%)と「どちらかというとそう思う」(34.5%)を合わせて45%となっており、経営層と従業員の間の認識の差が浮き彫りになった。
地方進出のネックは「コスト面」と「立地面」か
経営層への「地方進出を検討する際にネックになっているもの」についての質問に対しては、第1位が「費用対効果が読めない」で48.5%、第2位が「地方に進出しても、思ったほど経費を削減できない」で22.5%、第3位が「すぐに開設できる立地がない」で18%となった。地方進出後に取り組みたいのは「販路拡大」や「人材採用」など
また、経営層に「新たに地方に進出した場合、取り組みたいこと」を尋ねている。その結果、第1位だったのは「営業販路の拡大」で21.5%、第2位は「地方にいる優秀な人材の採用」で20%、第3位は「拠点としての体制確立」で18.5%に。以下は、「進出先の地元企業との連携・協業」(16%)や、「本社業務のサポート」、「新規事業の創設・推進」(ともに12%)などが続いた。地方進出におけるポイントは「コストメリット」と「営業機会」
また、「地方の移転先・進出先に求める選定条件」では、第1位が「コストメリット」(32%)、第2位が「営業機会」(23%)、第3位が「インフラが充実している」(19.5%)という結果に。地方進出のポイントとして、「コスト面」だけでなく「営業機会」も重視していることが判明した。
コロナ禍を経て、これまでは実施が不可能と考えてられていた職業や業種にもリモートワークが広まっており、地方移住や地方での就業を望む従業員は、経営者が考えているよりも多いことがうかがえる。「コスト削減」や「新たな営業機会」が見込める地方拠点を開設するといった選択肢も、今後は現実的になっていきそうだ。