株式会社313は2021年12月14日、「中小企業のパワハラ防止対策」に関する調査の結果を発表した。調査期間は2021年10月29日~11月2日で、従業員数25名~100名の中小企業の経営者506名/人事担当者510名の合計1,016名から回答を得た。これにより、中小企業におけるパワハラ防止対策の実態などが明らかとなった。
7割は「パワハラの定義や類型を把握」も、法の適用範囲拡大を認知していない企業は4割に
去る2020年6月に施行された「改正労働施策総合推進法」(以下、パワハラ防止法)の対象範囲が、2022年4月以降は中小企業にも広がる。このような状況のなか、中小企業では対策などの準備は進んでいるのだろうか。同社は最初に、「パワハラの3つの定義と6つの類型と種類を把握しているか」と質問している。それに対して、「しっかり把握している」(23.3%)、「ある程度把握しているつもり」(47.7%)との回答は合わせて71%となった。一方、「あまり詳しくは分からない」は23%、「全く分からない」は6%と、合わせて29%だった。7割を超える企業で、パワハラの定義や種類を把握していることがうかがえる。
また、「2022年4月から中小企業にもパワハラ防止法が適用されることを把握しているか」という質問に対しては、「知っていた」が59.5%、「知らなかった」が40.5%に。この結果から、適用範囲の拡大を把握していない企業も多いようだ。
「相談窓口設置済」は5割未満にとどまる
続いて同社は、「パワハラの相談窓口の設置の有無」を尋ねた。その結果、「社内に設けている」が33.6%、「社外に設けている」が14.4%で、合わせて48%に。一方、「設けていない」は52%という結果で、相談窓口の設置が進んでいるのは約半数の企業にとどまることがわかった。「相談窓口を社内または社外に設けている」とした回答者に対して、「相談窓口の設置が義務付けられることを知っているか」と質問すると、「はい」が77.8%、「いいえ」が22.2%となった。相談窓口を設置していない企業も含めると、義務化に対して正しい認識のない企業はさらに増えるだろう。
相談窓口を設置している企業も運用の課題は多い
さらに、前問で「相談窓口を設けている」とした回答者に、「社内に相談窓口を設置したてみて課題感はあるか」と聞いた。すると、8割以上が「とても大きな課題感がある」(30.8%)、「やや課題感がある」(53%)と回答し、「課題感はない」(16.2%)を大きく上回った。「具体的な課題点」を尋ねると、「相談者の情報が社内に漏れる」が43.6%で最も多く、以下、「相談者が不利益になる」(37.5%)、「行為者の情報が社内に漏れる」(29.4%)、「担当者の負担が増える」(29.4%)、「担当者を決めるのが困難」(27%)と続いた。パワハラ防止法30条で「相談者の不利益」を禁止していることからも、相談者が不利益につながることは、非常に大きな課題と言えるだろう。また、“担当者の負担”という観点からも、改善点が多いことがうかがえる。
企業規模が小さい故の課題も。現場担当者が感じる相談窓口の課題とは
現場の人事担当者に「社内に相談窓口を設けることについての感想」を自由回答で尋ねたところ、以下のような回答があがったという。●社内に相談室があり、相談者が他の職員に目撃されて、噂が広がってしまった(20代/女性/青森県)
●気軽に相談しにくいため、パワハラに気付きにくい。根本的な改善策が必要(20代/女性/神奈川県)
●人数が少ない中小企業なので、結局パワハラされた側が辞めるか我慢するしかなかった(30代/女性/兵庫県)
●パワハラの加害者が、自分の直の上司や会社の経営陣ということがあった(40代/男性/富山県)
●社員数が少ないので事実確認で情報が漏れてしまう(50代/男性/神奈川県)
●当事者同士意見が食い違う。どのように真実に近づけていくか、客観的な判断が難しい(50代/男性/兵庫県)
●気軽に相談しにくいため、パワハラに気付きにくい。根本的な改善策が必要(20代/女性/神奈川県)
●人数が少ない中小企業なので、結局パワハラされた側が辞めるか我慢するしかなかった(30代/女性/兵庫県)
●パワハラの加害者が、自分の直の上司や会社の経営陣ということがあった(40代/男性/富山県)
●社員数が少ないので事実確認で情報が漏れてしまう(50代/男性/神奈川県)
●当事者同士意見が食い違う。どのように真実に近づけていくか、客観的な判断が難しい(50代/男性/兵庫県)
本調査の結果から、中小企業におけるパワハラ防止対策には課題も多いことがうかがえる。相談窓口については、実情にあった運用方法を検討することが大切だ。また、「パワハラをしない・させない」という根本的な解決に向けては、トップの意識も重要となるだろう。