ヒューマングローバルタレント株式会社は2021年11月26日、「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」の結果を発表した。調査は、同社と株式会社エイムソウル、リフト株式会社、株式会社ウイルテックが4社で共同して実施し、調査期間は2021年8月6日~31日。「日本での在留・就労経験のある61ヵ国の外国籍人材」計477名から回答を得ている。
今回発表されたのは第2弾のレポートで、回答者の「在留資格別」に詳細分析したものだという。今回、取り上げる在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」のオフィスワーカー系と、「技能実習・特定技能」の就労となる。これにより、「外国籍人材の離職やモチベーションダウン」が起こる原因と、企業の受け入れ実態が明らかとなった。
外国籍人材の3割弱が「1年以内の早期離職」を経験
IT人材などの人手不足が深刻化するなか、外国籍人材を戦力として採用する企業も増えている。そこで、「外国籍人材の日本での就労実態」を探るため、調査では最初に「入社後1年以内の早期離職経験の有無」について尋ねている。その結果、「ある」が27%と、全体の3割弱が早期離職を経験していた。また、「ない(離職する事態が発生しなかった)」は56%で、「離職したかったが、制度や契約上できなかった」は16%だった。
この結果を就労資格別に見ると、「技術・人文知識・国際業務」では、「ある」が35%、「離職したかったが、制度や契約上できなかった」が20%となり、全体平均を上回った。一方、「技能実習・特定技能」では、「ある」が5%、「ない」が79%と、早期離職を経験した人の割合はごく少数だった。
「就労資格区分」ごとの離職要因の違いは?
次に、早期離職経験のある131名に、「離職の原因」を複数回答で聞いている。「技術・人文知識・国際業務」で、最も多くの回答を集めたのは「上司のマネジメント・指導に対する不満」の46%で、次点が「業務内容のミスマッチ」で42%となった。他方で、「技能実習・特定技能」では様子が異なる。「会社都合」、「日本人とのコミュニケーション機会の不足」、「社風(会社の文化)の不一致」、「給料が安い・残業代がない」の4つが共に40%の回答を集め、同率トップという結果だった。総評すると、就労資格ごとに原因が異なり、その要因は多岐に渡るという実態が見て取れる。
モチベーションダウンは、「技術・人文知識・国際業務」の7割弱が経験有
「入社後1年以内に、大幅に労働意欲が低下する『モチベーションダウン』を経験したことはあるか」という質問では、53%が「ある」、47%が「ない」と答えていた。就労資格別に見ると、「ある」と答えた人の割合は、「技術・人文知識・国際業務」で67%だったのに対し、「技能実習・特定技能」では32%と大差がついた。オフィスワークが中心の「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つ人のほうが、モチベーションの低下を感じやすい傾向にあるようだ。
マネジメントや人間関係に対する不満が「モチベーションダウン」を引き起こす
次に、モチベーションダウンを経験した185名が挙げた「原因」の集計結果から、在留資格別に多かった順に紹介する。「技術・人文知識・国際業務」では、トップが「上司のマネジメントに対する不満」の48%で、以降は「業務内容のミスマッチ」(45%)、「外国人に対しての差別・偏見がある」(43%)が続いた。「技能実習・特定技能」では、「職場の人間関係に対する不満」が38%と最多で、以下「暴力やいじめを含むパワハラ・セクハラがある」(29%)、「外国人に対しての差別・偏見がある」(29%)となった。
どちらの就労資格も「外国人に対する差別・偏見」が上位に入っており、国籍に対する偏見が、企業内でいまだに存在することがわかった。
「受け入れ体制は整備されていた」は全体の過半数が回答
次に、「就労した企業の外国籍人材の受け入れ体制の整備状況」の結果を参照する。整備されているという肯定的な回答は、「技術・人文知識・国際業務」では計53%(そう思う:37%とどちらかといえばそう思う:16%の合算)で、「技能実習・特定技能」では、計68%(そう思う:59%・どちらかといえばそう思う:9%)と、両者に大きな差があった。「日本企業側の工夫が必要なこと」としてトップに上がった回答とは?
最後に、「外国籍人材の受け入れで、より工夫・努力するべきと思う点」について資格別に上位3つを確認する。「技術・人文知識・国際業務」では、1位が「仕事と私生活のバランスへの配慮」の55%で、2位が「日本人社員向けの異文化理解教育の実施」の50%、3位が「雑談や懇親会など日本人と外国人のコミュニケーション促進」の49%となった。ワークライフバランスへの配慮を望む声から、業務の多忙さが伺える。
「技能実習・特定技能」では、1位が「雑談や懇親会など日本人と外国人のコミュニケーション促進」の39%で、2位が「外国籍人材採用方針や必要性の職場への説明」の37%、3位が「外国籍人材のトレーニング・育成計画の整備」の34%となった。こちらは、日本人社員との交流を始め、外国籍人材を採用することの周知などを望む声が多い。
外国籍人材は、日本企業の大きな戦力となりつつある一方で、差別的な視点やコミュニケーションの課題によって、離職に至るケースもあるようだ。就労者自身が能力を発揮するためにも、企業には「国籍にとらわれず、個々の能力が活かせるような組織づくり」が求められそうだ。