一般社団法人日本能率協会は2021年11月1日、全国のビジネスパーソンを対象に2013年より実施している、「職場や仕事に対する考え」に関する意識調査「ビジネスパーソン1000人調査」の中から、職場における「ペーパーレス化実施状況」の結果を発表した。調査期間は2021年8月13日~23日で、全国の企業や団体で働く正社員、役員、経営者1,000名から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症の影響からオフィス外での働き方が浸透する昨今の、企業におけるペーパーレス化の取り組み状況や課題などが明らかとなった。
電子化が進んでいるのは「勤怠管理」。「印鑑」や「契約書」では遅れも
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けてテレワークを導入する企業が増える中、職場でのペーパーレス化は進んでいるのだろうか。「あなたの会社は、どのような点が『電子化』されたか」との質問への回答を項目別に見ると、「勤怠管理」では、「完全に電子化された」が51.8%、「一部電子化された」が21.2%となり、合計で73%と、全項目中で最も多くなった。2019年4月から「従業員の労働時間の把握」が義務化されたことにより、他の業務より電子化が進んだと考えられる。反対に「完全に電子化された」との回答が少なかったのは、「印鑑」(10.5%)、「FAX」(14.8%)、「契約書」(15%)。いずれも1割台という。この3項目については、「電子化されていない」が約5割~6割超という結果となった。
5割以上が「この1年でペーパーレス化が進んでいない」と回答
「あなたの職場は、この1年でペーパーレス化が進んでいるか」との質問に対し、「進んでいる」との回答は43.9%(「とても進んでいる」が7.2%、「やや進んでいる」が36.7%)であった。一方で、「進んでいない」は56.1%(「あまり進んでいない」が35.4%、「全く進んでいない」が20.7%)と、半数以上を占めた。ペーパーレス化の進行度による「業務生産性向上」の実感の差は顕著か
「あなたの職場のペーパーレス化が進むと、業務の生産性が向上すると思うか」という質問に対して、全体では「向上する」が45.4%(「向上する」が12.9%、「やや向上する」が32.5%)と回答していた。その一方で、生産性が「落ちる」は10.1%(「やや落ちる」が7.5%、「落ちる」が2.6%)と、全体の1割程度にとどまった。職場におけるペーパーレス化の進捗状況ごとに結果を見てみると、「職場のペーパーレス化がとても進んでいる」と回答した群では、80.5%が、「業務の生産性が向上する」(「向上する」が45.8%、「やや向上する」が34.7%)と答えていた。一方、「ペーパーレス化がまったく進んでいない」とした群では、22.7%(「向上する」が10.1%、「やや向上する」が12.6%)と2割程度にとどまり、両者の間に60ポイント近い意識の差があった。
6割以上がペーパーレス化を不安視。「ITスキル」や「セキュリティ」が要因に
「職場におけるペーパーレス化に不安があるか」との質問に対して、「不安がある」答えたのは64.3%と6割を超えていた。
続いて、「具体的な不安点」を尋ねている。特に多かった項目は、「データ化に対するITスキル」(42.9%)と、「セキュリティ」(41.8%)の2つだった。ペーパーレス化に「メリット」を感じている人は全体の8割を超えたものの、「不安」を感じている人も多いことが浮き彫りとなった。
コロナ禍においても、ペーパーレス化が思うように進まない企業も多くあるようだ。とはいえ、ペーパーレス化にメリットを感じている人が多いこともわかった。ペーパーレス化を更に進めるためには、不安の種となっている、現状の課題への解決策の提示が必要となりそうだ。