経済産業省(以下、経産省)は2021年10月18日、総務省とともに、企業・消費者向けに実施した「プライバシーガバナンス」に関する調査結果の速報版を発表した。本調査は、経産省と総務省が昨年策定した、「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブック」の認知度向上等を目的としたもの。調査期間と回答数は、企業向けが2021年9月で291社、消費者向けが同年8月で314名となっている。この調査により、「消費者のプライバシー保護に対する意識」や、「企業が取り組むべき項目」などが明らかとなった。
デジタル社会の浸透とともに、企業における個人情報保護責任が増大
「企業のプライバシーガバナンス」とは、「プライバシー問題」への取組みに経営者が積極的にコミットし、組織全体でこの問題に取り組むための体制を構築・機能させていくことを指す。プライバシー問題に関する適切なリスク管理と、信頼の確保による企業価値の向上を目的とするものだ。DX化が加速する時代において、プライバシー保護への要請も高まっている。これを踏まえて経産省は、総務省とともに、企業がプライバシーガバナンスの構築のために取り組むべき項目を取りまとめた、「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.0」(※1)を、2020年に策定。本年7月には、企業の具体的な事例を更新した「ver1.1」(※2)を、経産省のホームページにて公開している。今回は、本ガイドブックの認知度を向上させ、プライバシーガバナンスに取り組む企業が、その取組みをより推進できるよう、調査結果を速報版として公開したという。なお、本結果に関する詳細な分析と、個別ヒアリング等による実践事例なども取りまとめた「調査結果報告書」については、年度末を目途に公開する予定だ。
企業の「消費行動に対する意識」と「実際の取り組み状況」とは
今回の調査では、「消費行動に対する企業の考えや実際の取組み状況」に関して、まず企業に対し、「プライバシーへの取組みを発信することで、顧客の消費行動にどの程度影響をおよぼすことができると思うか」を尋ねた。その結果、「影響をおよぼすことができる」が19.2%、「多少影響をおよぼすことができる」が39.5%に。合わせて58.7%の企業が、「プライバシーへの取組みを企業が発信することで、少なからず消費者の消費行動に影響を与えることができる」と考えていることが明らかとなった。
また、「プライバシーガバナンスブックで推奨する『企業の取組み』に対する、実際の企業の取組み状況」を、「取組みの内容」別で尋ねた。すると、「プライバシーに関する保護方針や、組織としての姿勢の明文化」は51.9%、「保護責任者の設置」は59.1%、「保護組織などの体制構築」は52.6%となり、それぞれ半数以上の企業が、現在取り組んでいることわかった。その一方で、「外部有識者などの第三者に意見を聞く」は21.3%、「ルールの策定」は38.8%、「社内研修」は28.9%と、思うように進んでいない取組みもあることが判明した。
個人情報をはじめとする、「プライバシー保護」を巡る企業の責任は、今後より一層増していくことが予測される。しかし、すでに多くの企業が着手している取組みもあれば、経産省より推奨されている取組みであっても、いまだ企業の着手が進んでいないものもあるようだ。リスク管理や企業価値向上のためにも、「プライバシーガバナンスガイドブック」を参考にしながら、自社での取組みを進めてみてはいかがだろうか。
【参考】
※1:経済産業省/「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.0」を策定しました
※2:経済産業省/「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.1」を策定しました
※1:経済産業省/「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.0」を策定しました
※2:経済産業省/「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.1」を策定しました