株式会社給与アップ研究所は2021年8月16日、直近1年で初めて転職した20代会社員108名に対して行った「経営理念と人事66の一貫性に関する実態調査」の結果を発表した。調査日は2021年7月8日。これにより、企業の経営理念と人事66の連動性の実態や、それによる若手社員の転職意向への影響などが明らかとなった。
若手社員の約半数は「経営理念」と「評価制度」の一貫性のなさを感じている
企業理念と評価制度の連動性は、若手社員の転職意向にどのように影響するのだろうか。はじめに、「転職前に勤めていた会社では『経営理念』と『人事評価制度』が一貫したものだったか」を尋ねた。すると「全く一貫していなかった」(13.9%)、「あまり一貫していなかった」(34.3%)との回答が合計して48.2%となった。この結果から、およそ半数の回答者が、退職した会社に対し、「経営理念と人事評価の一貫性がない」と感じていることが判明した。
一貫性のなさを感じる点は「方針と報酬体系の非連動」や「上司による指示や方針の違い」
続いて、「全く一貫していなかった」または「あまり一貫していなかった」とした回答者に、「会社のどの部分から『一貫性の無さ』を感じていたか」を尋ねた。その結果、「会社の方針と報酬体系が連動していない」、「上司によって指示や方針が違った」との回答が共に44.2%だった。次いで、「理念が現場に浸透していなかった」が42.3%となった。さらに、自由回答では、「本社と現場でやり方が違う」、「部門ごとに異なることが多すぎる」などといった意見があがった。
経営理念と評価制度の「一貫性の無さ」が、約9割の回答者の転職理由に影響
続いて、最初の質問で「全く一貫していなかった」または「あまり一貫していなかった」とした回答者に、「経営理念と人事評価制度の『一貫性の無さ』は、転職に影響したか」を尋ねた。すると、「非常に影響している」が30.7%、「少し影響している」が55.8%となり、合わせて86.5%の回答者が「影響している」と感じていることがわかった。このことから、経営理念と人事評価制度の一貫性の有無が、転職理由に大きく影響することがうかがえる。経営理念と評価制度の一貫性の無さは、社員の「ストレス」や「自社に対する誇りの喪失」を招く
さらに、「経営理念と人事評価制度の一貫性の無さによって受けた、具体的な影響」を尋ねた。すると、最も多かった回答は「ストレスがたまった」で、63.5%だった。以下は、「会社に誇りを持てなくなった」(38.5%)、「エンゲージメントが下がった」(28.8%)などと続いた。経営理念と評価制度の一貫性の無さが、社員の幸福度や会社に対する信頼度にも悪影響をおよぼしていることがうかがえる。自由回答では、「他の部門との連携が図りにくかった」、「業務効率の低下による、私生活への影響」などといった意見もあがった。
約9割が、経営理念と評価制度が一貫している企業に「魅力を感じる」
最後に、「経営理念と人事評価制度が一貫している会社に対して魅力を感じるか」を尋ねた。すると、「非常に魅力を感じる」が47.2%、「少し魅力を感じる」が39.8%となり、合わせて87%という結果に。「経営理念と人事評価制度の一貫性」が、企業の大きな魅力になりうることが考えられる。
経営にとって重要な「理念」や「ビジョン」を設定しても、人事評価制度がともなわなければ、かえって社員の不満を生んでしまうこともあるようだ。魅力ある企業に成長していくためには、企業理念やビジョンと、現在の評価制度を照らし合わせ、一貫性のある適切な制度を設けることが必要となりそうだ。