株式会社帝国データバンクは2021年7月12日、女性が社長または代表を務める企業について分析した調査結果を発表した。本調査は、同社のデータベースより、全国の約117万社を対象に行っている。なお、同社は1990年から同様の調査を実施しており、今回で8回目となる。この調査により、女性社長比率の推移や活躍状況、課題などが明らかとなった。
女性社長比率は1割に満たないが、年々上昇傾向で今回も最高値を更新
政府が各界における女性活躍推進を掲げてさまざまな施策を行うなか、企業における女性活躍状況の一指標となる「女性社長比率」はどのように変化しているのだろうか。はじめに、2021年4月末時点における「全国の女性社長比率」を分析した。すると、前年と比べて0.1ポイント増加の8.1%となり、微増ながらも過去最高を更新する結果に。女性社長比率は1990年以降緩やかに増えており、30年間で約3ポイント増加している。ただし、依然として1割を下回る低水準での推移だ。
業歴が浅い企業ほど女性社長比率が高い傾向。10年前と似た結果に
女性社長比率を「業歴別」にみたところ、最も高かったのは「設立から10年未満」で11.1%と、唯一の2ケタとなった。次いで「10~19年」が9.5%、「20~29年」が8.3%と続いており、業歴が浅い企業の方が、女性社長比率の割合が高い傾向が見て取れる。一方、設立から40年以上経過した企業では、いずれも7%前後にとどまった。10年前の2011年の結果と比較すると、やはり最も高いのは「創業10年未満」が9.7%で、他の業歴での結果も似た傾向を示している。
年代構成比は「70~74歳」が最多
続いて、2021年時点の女性社長を「年代構成」で分析した。すると、最も多いのは「70~74歳」で15.9%に。次いで、「65~69歳」が13.2%、「60~64歳」が13.1%と続いた。平均年齢は63.2歳で前年比+0.2歳となり、男性社長の平均年齢60.7歳を上回った。2000年代では50代の比率が高かったが、徐々に高齢化が進行していることが見て取れる。また、男性社長と比べると、特に「70歳以上」の割合が高まっており、女性社長の高齢化がより目立つ結果となった。就任経緯で最も多いのは「同族承継」で、男性社長と比べて10ポイント以上多い
就任経緯別で見ると、50.8%が「同族承継」による就任で、全体の半数を占めた。この数値は「男性社長」の39.5%を11.3ポイント上回り、前年の50.6%からも0.2ポイント増加。「同族承継」は女性が社長に就任する経緯の中心となっていることがうかがえる。次いで、「創業者」が35.3%と2番目に高くなったが、「男性社長」と比べて5.2ポイント低く、前年からも0.2ポイント低下した。
「新任女性社長」は50~54歳が最多。6割超が「自身が創業者」として就任
直近1年間(2020年5月~2021年4月)で新たに就任した「新任女性社長」の年代構成をみると、最も高いのは「50~54歳」で15.3%に。次いで「55~59歳」が14.5%となり、50代が全体の約3割を占めた。全体の平均では「60歳以上74歳以下」に山があったのに対し、直近1年間での新任社長に限ってみると、10歳近く年代が低いことが判明した。さらに「新任女性社長の就任経緯」を分析すると、最も割合が高いのは「創業者」で63.3%となり、前年から0.4ポイント上昇した。以下、「同族承継」が23.4%、「内部昇格」が5.9%と続く。また、「新任男性社長」と比べると、「同族承継」では8.5ポイント上回る一方で、「創業者」などではいずれも下回る結果となった。
業種別では「不動産」、「サービス」、「小売」などが上位に。反対に低い業種は?
最後に、女性社長比率を「業種別」でみると、「不動産」の16.9%が最も高く、1990年以降32年連続でトップとなった。以下、「サービス」が10.9%、「小売」が10.7%と続いており、BtoC業種では女性社長比率が高い傾向に。特に「サービス」における直近10年間の伸び率は、全業種中最も高くなった。これに対して「建設」は4.8%にとどまり、1997年以降25年連続で全業種の中で最も低く、全体の8.1%を下回る結果となった。
女性社長比率は30年前と比べて増加傾向にあるが、いまだ1割未満である。また、就任理由もキャリアに基づくものに比べ、「同族承継」が多いのが現状のようだ。今後も少子化・高齢化にともない労働人口の減少が進むなか、女性がキャリアを積み活躍していけるように、積極的な支援策を展開することが重要となりそうだ。