SDGsの取り組みに「積極的な業界」や「特に注力されている目標項目」とは。昨年からの変化を探る

帝国データバンクは2021年7月14日、「SDGsに関する企業の見解」についての調査結果を発表した。調査期間は2021年6月17日~30日で、全国の1万1,109社から回答を得た。同社によるSDGsに関する調査は、2020年6月に続いて今回が2回目となる。これにより、2020年度からの取り組み状況の変化や、具体的な取り組み項目などが明らかとなった。

約4割がSDGsに積極的で前年より増加。一方、取り組んでいない企業が5割超に

国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」について、達成目標の2030年まで10年を切るなか、企業の関心や取り組みはどのように変化しているのだろうか。

はじめに、「自社におけるSDGsへの理解や取り組み状況」について尋ねた。すると、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」は14.3%に。2020年6月に実施した前回調査より、6.3ポイント増加した。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は25.4%となり、前年比で9ポイント増加。両者を合わせると「SDGsに積極的」な企業は39.7%と、前年比で15.3ポイント増加しており、SDGsに関する企業の関心や取り組みは、前年よりも拡大していることがわかった。

一方で、「言葉は知っていて意味・重要性を理解できるが、取り組んでいない」が前年より8.5ポイント増の41.4%となり、全体で最多となった。さらに、「言葉は知っているが意味・重要性を理解できない」(9.1%)も含めると、SDGsに取り組んでいない企業の合計は50.5%となり、「取り組みを行っている企業」の合計を10ポイント以上上回った。

企業からは、「SDGsに取り組むことで、今まで見えなかった課題が見えてきた。社会貢献だけでなく、新たなサービスを生むなど業界全体の発展につながると思う」(缶詰・瓶詰食品卸売、広島県)や「これまで行ってきた取り組みを、改めてSDGsの項目に落とし込んだことで意識するようになった」(特殊産業用機械機器具卸売、埼玉県)といった意見があがった。

一方で、「中小企業にとって、社会的責任に対し企業の業績への影響が明らかに低く、明確な対応をとるレベルではない」(一般製材、愛媛県)といったマイナス意見も聞かれた。
SDGsの取り組みに「積極的な業界」や「特に注力されている目標項目」とは。昨年からの変化を探る

SDGsへの取り組み状況、半数を超える「大企業」に対し、中小企業では低迷

次に、SDGsに対する企業の意識について、企業規模別に比較した。SDGsに「積極的」と答えた企業は、「大企業」で55.1%と半数を超えた。一方で、「中小企業」では36.6%と、大企業と比べ18.5ポイント、「小規模企業」では31.6%で同23.5ポイント下回った。中小企業と小規模企業でSDGsに取り組む企業は半数以下となり、大企業の意識と比べて大差がみられる結果となった。

中小企業からは、「目標が壮大で、取り組みようがない」(食料品加工機械製造、大阪府)や「自社業務の延長線上の事には取り組めるが、コスト人的資源等から新たな取り組みへのハードルが高い」(はつり・解体工事、千葉県)等の意見があがった。
SDGsの取り組みに「積極的な業界」や「特に注力されている目標項目」とは。昨年からの変化を探る

業界別では「金融」「農・林・水産」の半数以上はSDGsに積極的

SDGsに対する企業の意識を業界別にみると、“積極的な業界”のトップは「金融」で56%、次いで「農・林・水産」が55.6%と、この2業界では半数を超えた。一方SDGsに取り組んでいない企業が最も多かったのが「卸売」の52.9%で、以下「運輸・倉庫」(51%)、「サービス」(50.8%)、「建設」(50.4%)と続き、いずれも5割超だった。

企業の声では、「農業生産の効率化を通じ、省エネルギーと食料供給を担いたい」(施設野菜作農、大分県)、「自社の取り扱う商品は石油化学商品が多いため、海洋ごみ問題やCO2排出問題などを課題としており、自然に優しい商材の取り組みを推進していきたい」(一般乗用旅客自動車運送、千葉県)などの意見があった。
SDGsの取り組みに「積極的な業界」や「特に注力されている目標項目」とは。昨年からの変化を探る

現在力を入れている項目は「働きがいも経済成長も」がトップ

続いて、「SDGsの17目標のうち、現在力を入れている項目」を尋ねた。すると、「働きがいも経済成長も[目標8]」が最も高く、32%に。企業にとって、取り組みやすい目標であることが、割合を高める一因のようだ。以下、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに[目標7]」(22.3%)、「つくる責任つかう責任[目標12]」(20.9%)が続いた。企業活動と結びつきやすい目標は比率が高くなる一方で、「飢餓をゼロに[目標2]」(4.8%)や「安全な水とトイレを世界中に[目標6]」(6.3%)などの7項目は、1割未満にとどまった。さらに、「分からない」とした企業も32.1%になり、取り組みが浸透していない企業が一定数あることもうかがえる。
SDGsの取り組みに「積極的な業界」や「特に注力されている目標項目」とは。昨年からの変化を探る

今後力を入れたい項目でも「働きがいも経済成長も」がトップ

最後に、「SDGsの17目標のうち、今後最も取り組みたい項目」を尋ねた。すると、最も多かったのは「働きがいも経済成長も[目標8]」で15.4%に。以下、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに[目標7]」(8.7%)や、「気候変動に具体的な対策を[目標13]」(7.7%)などが上位となった。
SDGsの取り組みに「積極的な業界」や「特に注力されている目標項目」とは。昨年からの変化を探る
SDGsに対する意識は年々高まりを見せており、企業活動では社会的責任のみならず、ESDやステークホルダーとの信頼関係構築といった観点でも重視されている。まだ取り組みを始めていない企業は、自社の事業活動としてできることがないか、現状の洗い出しを進めてみてはいかがだろうか。