経済産業省(以下、経産省)は2021年7月27日、地域におけるデジタル技術の活用を加速させることを目的に、「高度デジタル人材」と「地域中小企業」をマッチングさせる「ふるさとCo-LEADプログラム」を実施すると発表した。同プログラムでは、フィールドワークツアーや高度デジタル人材が提案する「新たなビジネスモデル案の作成等」を通じ、地域中小企業のデジタル化を支援する仕組みを構築し、地方のDXを推進していくという。
大都市圏に偏在する高度デジタル人材と、デジタル化に課題を持つ地域中小企業をつなぐ
新型コロナウイルス感染症拡大を皮切りに、「Society5.0」の実現に向け、デジタル化に取り組む必然性はますます高まっている。しかし、デジタル化に対応できる人材の多くは東京都・大阪府・愛知県などの大都市圏に偏在しており、地方のデジタル化は遅れが目立つのが現状だ。そのため、地方からは「高度デジタル人材による支援」を期待する声も多い。しかし、現状では地方の中小企業等(以下、地域中小企業)と高度デジタル人材の接点がほとんど無いため、地域中小企業としては“相談相手が見えない”という課題がある。一方の高度デジタル人材のなかには、「副業や兼業」といった柔軟な働き方に目を向け、新たな活躍の場を模索する人も増加傾向にあるようだ。
このような状況を踏まえ、経済産業省は2020年度に、高度デジタル人材チームを地方に派遣。フィールドワークを通じて、地元企業等とのマッチングおよび課題の設定を行い、地域課題解決に貢献するプロトタイプを作成する取り組みを実施した。
同省はこの実績を活かし、今年度は、地域中小企業と高度デジタル人材の「出会いの場」を創出することを決定した。地域中小企業と高度デジタル人材が、協働で「デジタル技術を活用した新たなビジネスモデル案」を作成するプログラムを通じて、地域中小企業のデジタル化を支援する仕組みを構築するという。
具体的な取り組み内容は以下の3点だ。
(1)「ミートアップイベント」「フィールドワークツアー」を通じ、出会いと関係構築の場の創出
全国105地域に存在する「地方版IoT推進ラボ(※)」のうち3地域を選び、高度デジタル人材15名程度との「ミートアップイベント」を開催する。地域からは「地域の魅力」、「地域産業の課題」、「デジタル化に意欲的な地域中小企業等の紹介」、「フィールドワークツアーの案」のプレゼンを実施。一方、高度デジタル人材からは、自身のスキル等のPRができるセッションを通じ、両者のマッチングを図る。その後、マッチングした地域と高度デジタル人材で、地域のフィールドワークツアーを実施する。高度デジタル人材は、地域中小企業の現場を視察し意見交換等を行った上で、自身のスキルをいかせる地域中小企業に対し、デジタル技術のアイデアを提示する。
(2)地域中小企業における「新たなビジネスモデル案」の作成
高度デジタル人材のサポートのもと、地域中小企業がデジタル技術を活用した新たなビジネスモデル案を作成する。(3)高度デジタル人材の「実績等の見える化」
「地方版IoT推進ラボ」をはじめとする地域のコミュニティが、関連する実績等を有する高度デジタル人材との関係を構築しやすい仕組みを提案する。今後、2021年8月~9月にかけて対象地域と人材の募集・選定を実施。10月以降ミートアップイベントとフィールドワークツアー等を実施し、2022年2月に最終報告会を行う予定だ。
地方企業は、デジタル人材の不足から、自社のDX推進が進まないと感じることもあるだろう。自社単独で取り組むだけでなく、地域全体でデジタル人材との関係性を構築する、このような試みに参加してみるのもひとつの手かもしれない。