株式会社帝国データバンク(以下、TDB)は2021年6月15日、「事業継続計画(BCP)に対する企業の見解」に関する調査結果を発表した。本調査は2016年以降継続的に実施されており、6回目となる今回は「TDB景気動向調査2021年5月調査(調査期間:2021年5月18日~31日)」とともに実施された。全国2万3,724社を対象とし、有効回答企業数は1万1,242社(回答率47.4%)だった。これにより、事業継続計画に関する企業の取り組み状況や、計画策定に関する課題などが明らかとなった。
BCPを「策定している」企業は過去最高になるも、2割を割り込む
はじめに、「自社における事業継続計画(以下、BCP)の策定状況」について尋ねた。すると「策定している」とした企業の割合(以下、BCP策定率)は17.6%となり、前年(2020年5月)から1ポイント増加した。BCP策定率は年々緩やかに上昇しており、今回調査で過去最高となったものの、未だ2割を割り込み、低水準にとどまっている状況だ。想定リスクは「自然災害」が5年連続で首位に
続いて、BCPを「策定している」、「策定中」、「策定を検討している」とする企業に対し、「事業継続が困難になると想定しているリスク」について尋ねた。その結果、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が72.4%で首位に。これは2017年から5年連続となる。次いで、新型コロナウイルスなどの「感染症」が60.4%と続いた。また、1年前より増加が目立ったのは、「設備の故障」(2020年:30.6%、2021年:35.8%)、「情報セキュリティ上のリスク」(同27.8%、同32.9%)だった。2020年はサイバー犯罪の検挙数が過去最高となるなど、「情報セキュリティ上のリスク」は顕在化しており、データの取り扱いに対する意識の高まりが示唆されている。リスクへの備えでは「従業員の安否確認手段の整備」、「情報システムのバックアップ」が半数超
BCPを「策定している」、「策定中」、「策定を検討している」とした企業に、「事業が中断するリスクに備えて実施または検討している内容」を尋ねると、最も高かったのは「従業員の安否確認手段の整備」で68.5%となり、2017年から5年連続で首位となった。次いで「情報システムのバックアップ」が55.4%だった。また、多くの項目で大企業が中小企業の回答を上回ったが、規模によって取り組む内容にも違いがみられた。BCP策定の効果「従業員の意識向上」が首位。外部からの評価にメリットも
次に、BCPを「策定している」企業に「策定による効果」を尋ねた。すると「従業員のリスクに対する意識が向上した」が55.5%で最も高かった。特に大企業では60.1%と6割を超えており、その効果を実感していることがうかがえる。以下、「事業の優先順位が明確になった」(33.4%)、「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」(33%)などが続いた。さらに、「取引先からの信頼が高まった」(23.2%)といった外部からの“見られ方”に関しては、「公共工事の総合評価入札での加点となり、受注機会増加に?がった」(土木工事、茨城県)や「事業継続力強化計画の認証取得による税制優遇を得た」(一般貨物自動車運送、兵庫県)といった、メリットを実感する声もあがった。
BCP未策定の理由は「スキル・ノウハウ」や「人材の確保」など
最後に、BCPを「策定していない」企業に「その理由」を尋ねると、最も多かったのは「策定に必要なスキル・ノウハウがない」で41.9%となり、2017年調査以降5年連続で首位だった。以下、「策定する人材を確保できない」(29.3%)、「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(27.4%)など、例年と同様の項目が上位となった。企業からの自由回答では、「資金調達が難しく、BCPを策定しても、実行が困難」(肉製品製造、山形県)、「今後取り組むべき課題だと思うが、手が回らないのが実情」(木造建築工事、山口県)といった課題を感じている声が多くあがった。
また、中小企業では「必要性を感じない」が23.8%と、大企業の19.7%を上回る結果に。「自社のみ策定しても効果が期待できない」など、策定に難しさを感じていることに加え、BCPの必要性に懐疑的である様子もうかがえる。さらに、費用面に対する懸念も大企業より高水準となった。
自然災害・感染症の拡大や情報セキュリティ上のリスクなど、事業運営に支障をきたすリスクは常に存在すると実感している企業も多いだろう。いざという時にどのような対応が必要となるのか、まずはできることから始めてみてはいかがだろうか。