エヌエヌ生命保険株式会社 は2021年4月26日、中小企業における経営者と従業員の意識の違いに関して調査を行い、その結果を発表した。調査期間は2021年4月2日~4月7日で、従業員300人未満の中小企業経営者(社長、会長、取締役)および開業医1,819名と、従業員2,266名より回答を得た。これにより、中小企業における「経営者」と「従業員」それぞれが 抱える不安や重要視しているものなど、意識の差が明らかとなった。
経営者および従業員のいずれも半数以上は「就業不能になること」を不安視
ライフスタイルの変化に合わせて、働き方は多様化し「仕事」に対する考え方も徐々に変化してきている。そのような中、経営者と従業員間で、働く上での意識に差はあるのだろうか。はじめに、「突然の病気や事故などで、就業不能になることの心配はあるか」を尋ねると、「ある」と回答したのは、経営者が65.2%、従業員が58.3%だった。いずれも半数以上が就業不能になることへの不安を抱いているとわかった。
また、「就業不能になる理由」として考えられるものを聞くと、経営者と従業員いずれも「突然の疾病」が最も多い結果となった(経営層:56.6%、従業員:53.8%)。以下、「業務外の事故」(経営層:45%、従業員:42.2%)、「業務に関連した事故(経営層:24%、従業員:25.1%)と続いた。
就業不能になった際、お金について不安に感じることは?
次に、「就業不能になった場合、お金について不安に感じること」を尋ねると、経営者・従業員ともに「自身・家族の生活費」(経営者:55.5%、従業員:80.5%)、「医療費・療養費」(経営者:33.3%、従業員:56.2%)が上位2つとなった。経営層の約8割が、就業不能に備えた「経営代行・後任」を決められていない
合わせて、「就業不能になった場合、仕事について不安に感じること」を尋ねた。その結果、経営層は「経営の代行・後任」が50.2%と最も多かった。以下、「顧客に迷惑をかけること」が38.1%、「従業員に迷惑をかけること」が33.7%と続いた。経営者という責任感から、企業全体を気にかけていることがうかがえる。従業員は、「会社に迷惑をかけること」が50.9%と最も多く、それに「就業復帰の可否・時期」が43.5%、「担当業務の今後」が33.1%と続いた。
経営層に「就業不能の場合に備えて、代理の経営者を決めているか」を尋ねた。その結果、「決めていない」が57%、「決めていないが、候補を検討したことはある」が20.9%で合計77.9%となり、経営の代行や後任に不安を抱きながらも、代理経営者や後任者を決めていないことが明らかとなった。
経営者は「専門スキル」、従業員は「ワークライフバランス」を重視
続いて、従業員に「働く上で得られるものとして最も重要視しているもの」を尋ねると、「報酬」が35.6%と最多だった。以下、「ワークライフバランス」が21%、「やりがい」が16.1%と続いた。一方で、経営層に「働く上で得られるものとして、従業員が最も重要視していると予想されるもの」を尋ねると、トップは従業員同様に「報酬」が32.7%となったが、以降は異なり、「専門スキル」が19.1%、「やりがい」が18.1%という結果だった。従業員と経営者の間で、「ワークライフバランス」と「専門スキル」の項目において、意識の違いがあることが判明した。
「やりがい」、「給料」、「残業時間」を他業界と比較したとき、立場によって考えは異なるのか
最後に、「勤務先での働き方について他業界と比較して、やりがい・残業時間・給料の3項目に対してどのように思うか」を尋ねた。その結果、「やりがいが多い」との回答は、経営層が31.8%なのに対し、従業員は20.2%にとどまった。また、「給料が多い」との回答も、経営層が18.9%なのに対し、従業員は6.4%という結果に。「やりがい」と「給料」は他社と比較して「多い」と感じている経営層が従業員よりも多いことがわかった。また、「残業時間が少ない」と回答した経営層は43.3%なのに対し、従業員は36.6%と、いずれの項目においても経営層と従業員では認識にズレがあるようだ 。
この調査結果により 、「就業不能になること」への不安は経営層と従業員で差はないものの、「働く上で重要視していること」や「他業界と比較した働き方の認識」については、経営層と従業員で認識が大きく異なっていることがわかった。今後も企業が持続的に発展し、生産性を向上させていくためには、従業員との価値観をすり合わせていくことが重要といえるだろう。