公益財団法人日本財団は2021年5月18日、同財団が支援する「The Valuable 500(V500)」への加盟企業数が目標の500社に到達し、取り組みを始動すると発表した。同組織は、ビジネスにおいて雇用・製品サービスが障がい者にも不自由なくアクセスできる「障がい者インクルージョン」を推進する経営者ネットワークだ。日本企業50社を含むグローバル企業500社が参画し、障がい者が社会やビジネス、経済において潜在的な価値を発揮できるような取り組みを実施していきたいという。
世界500社で障がい者の潜在的価値発揮を支援
WHO and World Bankが2011年に発表した「World Report on Disability」によると、世界の障がい者人口は約10億人といわれている。また、「Return on Disability (2020) Annual Report: The Global Economics of Disability」によると、障がい者とその友人や家族を合わせた購買力の総額は13兆ドルとなり、市場は大きい。その一方で、障がい者に配慮した商品等を提供している企業は3.6%(同Return on Disabilityより)と非常に少なく、今後の成長が期待される分野といえるだろう。さらに昨今、日本では障がい者の法定雇用率が改正され、雇用やその情報開示が進むものの、該当者が潜在能力を発揮して働く環境の整備や情報開示は不十分であり、企業間の知見を共有する場もないのが現状だ。
そこで、2019年1月に開催された世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」にて、障がい者を取り巻く課題を、グローバル企業が協働してビジネスの視点から解決するべく、「The Valuable 500(V500)」が発足した。同組織は、世界500社のビジネスリーダーからなる組織で、社会やビジネス、経済において障がい者が潜在的な価値を発揮できるような「改革」を起こすことを目指すものだ。
今回、これまで参加を募ってきた500社が全て出揃ったことを機に、募集を終了。今後は障がいのある消費者の「ニーズ調査」や「商品開発」、「企業の障がい者インクルージョン度合いを図る指標づくり」、「アクセシビリティに配慮した求人ポータルサイトの設置」などを行っていく。また、国際医療機関等や加盟企業同士をつなぐネットワーク会議等の主宰により、知見の共有を目指していくという。
なお、加盟の日本企業50社は以下の通り。
株式会社アーバンリサーチ、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、株式会社朝日新聞社、ENEOSホールディングス株式会社、NEC(日本電気株式会社)、株式会社荏原製作所、オムロン株式会社、花王株式会社、川田テクノロジーズ株式会社、KNT-CTホールディングス、株式会社京王プラザホテル、株式会社山陰合同銀行、参天製薬株式会社、サントリーホールディングス株式会社、塩野義製薬株式会社、株式会社静岡銀行、清水建設株式会社、昭和電工株式会社、新生銀行グループ、住友生命保険相互会社、セイコーホールディングス株式会社、西武グループ、セガサミーホールディングス株式会社、積水ハウス株式会社、全日本空輸株式会社、ソニー株式会社、ソニー生命保険株式会社、ソフトバンク株式会社、SOMPOホールディングス株式会社、大成建設株式会社、大日本印刷株式会社、大和ハウス工業株式会社、合同会社DMM.com、株式会社電通、TOTO株式会社、日本航空株式会社、日本電信電話株式会社、株式会社ノーリツ、日立グループ、株式会社ファーストリテイリング、株式会社ブリヂストン、株式会社ベネッセホールディングス、マツダ株式会社、マネックスグループ、丸井グループ、三井化学株式会社、三井住友フィナンシャルグループ、三菱ケミカル株式会社、ユニ・チャーム株式会社、読売新聞東京本社
このような取り組みを行うことで、障がい者の「働きやすさ」や「暮らしやすさ」を考えることができるだろう。障がい者雇用を難しいと感じている企業も、まずは理解や知見を深めることで、不足する人材の確保や生産性向上につながるかもしれない。