1on1プラットフォームを提供する株式会社KAKEAIは2021年4月16日、リモートワーク下における1on1の実態に関する解析結果を発表した。これは、同社のプラットフォームにて2020年11月1日~2021年3月31日に実施された1on1の実績データから10,000件を無作為に抽出し、解析したものだ。具体的には、部下が1on1の前に選択する「話そうと考えている『トピック』」と「上司に『求める対応』」、および部下が1on1実施後に選ぶ「1on1の後の『すっきり度』」を解析している。これにより、1on1で話されているトピックや部下が上司に求める内容、1on1後の部下の満足度などが明らかとなった。
部下側が事前に選択したトピックの傾向は?
1on1を行う目的として、「上司と部下の信頼関係の醸成」や「課題の把握」などがあげられる。それでは、世の中の企業はどのように1on1を行っているのだろうか。はじめに、「部下が選択した1on1トピック選択の傾向」について分析した。すると、「業務以外のトピックのみ」が35.6%と最も多く、以下、「業務の進捗や進め方のみ」が35.1%、「業務+他トピックを幅広く」が29.3%と続いた。いずれの回答も3割程度と、結果はほぼ均等に分かれた。
1on1の場で最も会話されたのは「業務の進捗や進め方」
次に、「実際に1on1で会話されているトピック」を分析すると、「業務の進捗や進め方」が52.1%と過半数を占めることが判明した。一方で、「人間関係」や「心身の状態」、「プライベート」など業務以外のトピックも幅広く選択されていることから、1on1は「部下が上司に業務以外の相談を自発的に行う場」になっていることがうかがえる。また、「今後のキャリア」(10.1%)や「会社や部署の方針」(10.6%)などもあり、リモートワーク下のコミュニケーション不足から発生しやすい課題の解決にも、1on1がひとつの手段として機能しているといえるだろう。
部下が上司に求める対応は「意見を聞きたい」、「アドバイスがほしい」など
続いて、「1on1において上司に求める対応」を調べると、「意見を聞きたい」が22.7%と最も多くなった。以下、「報告したい」が19.2%、「一緒に考えてほしい」が18.9%、「具体的なアドバイスがほしい」が13.9%、「話を聞いてほしい」が10.4%と続いた。部下は上司に幅広い対応を求めているようだ。同じトピックにおいても、求める対応はさまざま
次に、「部下が事前に選んだ1on1のトピックと、部下が上司に求める対応」をクロス集計した。トピックで最多の「業務の進捗や進め方」に対しては、「報告したい」が11.7%、「一緒に考えてほしい」が11.3%、「意見を聞きたい」が10.3%、「具体的なアドバイスがほしい」が8.4%、「話を聞いてほしい」が4.3%と、結果は分散していた。6割超の部下が「すっきり」と回答
また、1on1実施後の部下の「すっきり度」では、「すっきり度5(最も満足)」が41%、「すっきり度4(2番目に満足)」が24.6%と、合わせて65.6%が満足感を得られていることが明らかとなった。一方、「特にすっきりしなかった」が1.7%、「すっきり度1」が11.8%、「すっきり度2」が3.9%と、合計して17.4%は十分な満足感を得られていないことも判明した。
上司の得意な対応は「部下の話を聞く」こと
最後に、1on1で話されたトピック×対応ごとの「部下のすっきり度」を比較し、「上司が得意、もしくは苦手とするトピックの対応」について分析した。マトリクス内の色分けは、緑色が濃いほどすっきり度が高く、赤色が濃いほどすっきり度が低いことを表している。トピック別に見ると、「プライベート」、「スキルや力の向上」、「今後のキャリア」などのすっきり度が高く、上司側が対応を得意とする傾向にあるようだ。一方で、「会社や部署の方針」、「人間関係」、「心身の状態」は比較的苦手な傾向にあるといえそうだ
また、対応別に見ると、「話を聞いてほしい」、「報告したい」については得意とする傾向があり、「一緒に考えてほしい」という要望は、苦手な上司が多いことが示された。
リモートワークの普及で、対面でのコミュニケーションが減少し、悩みや不安を抱えがちなビジネスパーソンもいるだろう。生産性向上に繋がる働きやすい環境づくりには、「心理的安全性の確保」が重要だ。コミュニケーションの質を改善する方法を、継続的に模索してきたい。