株式会社JTBコミュニケーションデザインは2021年3月23日、「ニューノーマルの社長との心理的距離調査」と題したアンケート結果を発表した。調査は2021年1月29日~30日に、従業員数500人以上の企業にフルタイムで勤務するビジネスパーソン(一般社員から部長クラスまで)を対象にしたもので、平均週2日以上リモートワークをしている1,030名より回答を得た。これにより、リモートワークを行う社員が感じる、上司や同僚との心理的距離やモチベーションとの関連などが明らかになった。
社長との心理的距離はリモートワークに影響されるのか?
リモートワークが普及するなか、ビジネスパーソンが感じる「社長や上司、同僚との気持ちの上での距離(以下、心理的距離とする)」はどのように変わったのだろうか。はじめに、「社長との心理的距離」について尋ねた。その結果、「違う都道府県にいる感覚(500キロメートルくらい)」が23.9%と最も多かった。次いで、「別の部署、別のフロアにいる(30メートルくらい)」が21%だった。
中には「違う星にいる(4億キロメートルくらい)」(14.4%)や「海を隔てている、違う国にいる(1万キロメートルくらい)」(10.8%)など、社長との距離は「1万キロ以上ある」だと感じている回答者を合わせると25.2%となった。
次に、先述の結果を従業員のリモートワーク頻度毎に比較した。すると、「違う星にいる」は、リモートワーク頻度が高い人ほど選択する傾向にあることがわかり、「平均して週に2日程度」では9.6%なのに対し「ほぼ毎日リモートワーク」では18.3%だった。オフィスに物理的に出社しないことが、社長との心理的距離が増す要因の一つになっていることが示された。
自由回答では、リモートワークによって「以前よりもオンラインのコミュニケーションの機会が持てている」という肯定的な声もある一方で、「社長と直接会う、話す機会は減った」、「社長からの発信はない・思いが伝わらない」といった声も寄せられた。
自由回答では、リモートワークによって「以前よりもオンラインのコミュニケーションの機会が持てている」という肯定的な声もある一方で、「社長と直接会う、話す機会は減った」、「社長からの発信はない・思いが伝わらない」といった声も寄せられた。
社長よりも上司や同僚の方が「身近に感じる」
続いて、「社長、上司、同僚との“物理的距離”と“気持ち上の距離”をどう感じているか」を尋ねた。社長に対する回答では「気持ちの上での距離の方が遠い」とした人が41.4%となり、4割を超える社員が、社長と「心理的距離がある」と感じていることが明らかとなった。「気持ちの上での距離間の方が近い」と回答とした割合は、対社長では15.4%、対上司では30%、対同僚では35.1%となり、上司や同僚に対しては3割を超えた。
心理的距離の近さは、「仕事へのモチベーション」にも影響している
また、「気持ちの上での距離と仕事に対するモチベーションの関連性」を調べると、相手が社長、上司、同僚とすべての場合で、気持ちの上での距離が「近い」と感じている人ほど、仕事に対するモチベーションは高くなる傾向にあると判明。「心理的距離の近さ」は、安定的な関係の実感や心理的安全性につながり、個人の内発的なモチベーションを支えているようだ。リモートワークの増加で重要度が見直されている「雑談」や「対話」
次に、「リモートワークの増加で重要度が増したこと」を聞いた。最も多かったのは、「同僚や上司との雑談」で48.3%だった。以下、「直属の上司との対話」が43.7%、「部門などの枠を超えた、社内コミュニケーションの場」が43.3%、「社長など経営トップから従業員に向けた、今後のビジョンや方針等を伝えるメッセージ」が42.7%と続いた。会社への「愛着形成」が高まる取り組みにはどのようなものがある?
最後に、「会社との心理的距離を縮める上で役立つ施策は何か」を尋ねたところ、「やりがいのある仕事ができること」が42.3%で最も高くなった。以下、「自分の仕事への評価に納得できること」が36.4%、「職場の人間関係に満足できること」が33.7%と続いた。また、自由回答では「社長からのメッセージ発信や交流機会の設定」、「定期的なミーティング、1on1ミーティング」、「雑談」、「アセスメントツールの活用、社内イベントや広報の拡充」などがあげられた。このような定期的な交流が、社員同士の一体感を高めるのに効果的なようだ。
リモートワークが推奨され、対面のコミュニケーションを取らない形で業務が進められる環境下では、心理的距離が生まれやすいという課題がありそうだ。社員のモチベーションを維持し、会社への帰属意識を高めるためにも、経営者の積極的な発信やコミュニケーション機会の創出に、意識的に取り組みたい。