帝国データバンクは2021年2月5日、同年1月時点の企業概要データベース「COSMOS2」から企業の社長データ(個人、非営利、公益法人等は除く約94万社)を抽出し、業種、業歴、都道府県ごとの集計および分析結果を発表した。これにより、社長層の平均年齢や事業承継に対する課題が明らかとなった。
30年間上がり続ける社長の平均年齢
現在、社長の平均年齢は年々上昇傾向にある反面、全国の企業における後継者不在率は2020年時点で65.1%となり(同社の「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年)」より)、事業承継に対する備えが追いつかない企業が多く存在している状況といえる。実際に、社長の平均年齢はどの程度上昇しているのだろうか。はじめに「社長の平均年齢」を調査すると、帝国データバンクが調査を開始した「1990年」は「54歳」だったものの、「2020年」には「60.1歳」となり、30年間ずっと右肩上がりに高齢化が進んできたことが見てとれる。
社長の平均年代は「50~70代」が多く、業種別では「不動産業」の年齢が高い
次に、社長の平均年齢と年代構成比を「年代別」、「業種別」に比較した。年代別に見ると、「60代」が27.3%を占め最も多い結果に。以下「50代」が26.9%、「70代」が20.3%と続いた。そのうち上場企業を見ても「60代」が最も多く、半数近くの43.3%を占めた。また、業種別に平均年齢を見ると、「不動産業」が62.2歳と最も高かった。全体の平均年齢を上回った業種は、他にも「製造業」(61.3歳)、「卸売業」(61歳)、「小売業」(60.2歳)がある。なお、「製造業」、「卸売業」、「小売業」では「60代」が最も多いが、「不動産業」では「70代」が多数を占めた。
業歴30年以上の企業は平均年齢を上回る
続いて、社長の平均年齢と年代構成比を「業歴別」に比較した。すると、「30~50年未満」が63.1歳、「50~100年未満」が62.4歳、「100年以上」が62.2歳と、業歴30年以上の企業は全体の平均年齢の60.1歳を上回る結果に。また、「10年未満」では「40代」が34.5%と最も多くを占める一方、「30~50年未満」では「60代」と「70代」(同率で29.3%)が、「50~100年未満」と「100年以上」では「60代」(「50~100年未満」:29.7%、「100年以上」:32.7%)が最多となった。
東北地方は平均年齢が高い傾向に
次に、社長の平均年齢推移を「都道府県別」に比較。その結果、平均年齢が最も高かったのは「秋田県」で平均62.2歳(全国平均+2.1歳)だった。以下、「岩手」が62歳(同+1.9歳)、「青森県」が61.8歳(+1.7歳)と続いた。また、東北以外でも主に東日本における地域は全国平均を上回る地域が目立つ傾向に。さらに、1990年と比較して社長の平均年齢が最も高くなったのは「秋田県」の+8.4歳だった。続いて、「青森県」が+7.9歳、「山梨県」・「沖縄県」が同率で+7.8歳という結果に。一方、「三重県」は平均58.8歳(全国平均-1.3歳)と、全国で最も平均年齢が低いことがわかった。
交代率は依然として低い水準を維持
最後に、「1990~2020年までの社長の交代率」を見ると、1991~1993年は5%近くに上昇したものの、1994年に4%付近まで下落したあとは多少変動しながら緩やかに下がり続けており、「2020年」には3.8%となった。このように、交代率は依然として低いことがうかがえる。
企業における後継者不足が懸念される現在、今後はこれまでに培ってきたノウハウや歴史を絶やさないよう、事業承継に向けた準備が必要となるだろう。企業の将来性を担保していくためにも、早めの後継者選定や育成が円滑な事業承継の鍵となりそうだ。