国内外の企業に人材紹介を行うエンワールド・ジャパン株式会社は2020年12月、「コロナ禍での企業の従業員サポート」に関する調査結果を発表した。調査期間は2020年11月4日~10日で、外資系企業(64%)と日系企業(36%)計269社から回答を得た。これにより、在宅勤務やリモートワークを行う社員に対する企業のサポート状況や、外資系企業と日系企業の文化の違いなどが明らかとなった。
「在宅勤務手当」の支給額は日系企業の方が高い傾向
新型コロナウイルスの影響で在宅勤務制度を導入する企業が多い中、社員に向けたサポートの実態はどのようになっているのだろうか。はじめに、全社員または一部社員に在宅勤務を導入している企業に対し、「在宅勤務手当を支給しているか」を尋ねた。すると、全体の20%(外資系企業:21%、日系企業:20%)が「毎月支給している」と回答した。
続いて、「毎月支給している」とした外資系・日系企業それぞれに「支給金額」を聞いた。外資系企業では、「3,000円以上~5,000円未満」が41%で最多、日系企業では「5,000円以上~10,000円未満」が39%で最多だった。また「10,000円以上」とした企業は、日系企業が17%、外資系企業が6%と、日系企業の方が11ポイント高く、総合的に日系企業の支給額の方が高い傾向となっていた。
また、「単発の一時金を支給した」と回答した企業(外資系:5%、日系:12%)の支給額を見ると、「10,000円以上~50,000円未満」が全体の53%と半数以上で、企業区分では外資系企業が63%、日系企業が45%という結果だった。
6割以上の企業が「定期代の支給」を停止。交通費は出勤日数に応じた支払いに変更
続いて、在宅勤務手当以外の支給実態について尋ねた。「通勤手当」については、「定期購入費用の支給を停止、出勤日数に応じて支払い」と回答した企業が全体の65%(外資系:67%、日系:62%)で、大半の企業が支給方法を変更したことが明らかとなった。在宅勤務時の「パフォーマンス向上」の取り組みトップは「在宅勤務のルール作成」
続いて、在宅勤務やリモート環境下で社員のパフォーマンスの維持・改善に向けて取り組んでいることを尋ねた。第1位は「在宅勤務・リモートワークの規則/ルールの作成」で、全体の57%(外資系:52%、日系:66%)となり、過半数以上が回答した。以降、「中途入社社員へのオンライン研究」(全体:39%、外資系:39%、日系:38%)や「既存社員へのオンライン研修」(全体:36%、外資系:34%、日系:40%)が上位に続いた。一方で、外資系企業と日系企業のギャップが大きかった取り組みは「在宅勤務・リモートワークの働き方のコツ、ティップスの共有」(全体:32%、外資系:38%、日系:21%)で、外資系企業と日系企業の間に17ポイントの差があった。
「従業員エンゲージメント」の対策方法は、企業区分で異なる
次に、在宅勤務やリモート環境下での社員のエンゲージメント維持・改善に向けて開始した取り組みを尋ねた。すると、全体の第1位は「働き方への満足度調査」で、25%(外資系:26%、日系:23%)だった。ところが、外資系/日系別に見ると、それぞれ最も回答を集めた項目は、外資系企業が「経営層からのメッセージの発信」(28%)で、日系企業が「在宅勤務手当」(25%)となった。外資系企業では精神的なサポート、日系企業では物理的なサポートの有無がモチベーション維持に関わってくるようだ。また、両企業間で最もギャップがあったのは「全社ミーティングの実施/回数増加」で、外資系企業は25%だったのに対し、日系企業は3%と22ポイントも下回る結果だった。
6割の企業が「上司との定期的なミーティングを実施」。外資系企業では専門家の相談窓口設置が多い
最後に、「社員の心身の健康維持や改善のために行っていること」を尋ねた。その結果、第1位は「上司との定期的なミーティングの実施」で、外資系が58%だったのに対し日系は67%と、日系企業が外資系企業を9ポイント上回った。一方、外資系企業では「専門家の相談窓口の設置」が39%となり、日系企業の21%を18ポイントも上回るなど、それぞれの企業区分の特色が出る結果となった。
急速に広がりを見せるテレワークだが、社員のモチベーションや生産性を維持する取り組み状況は、企業によっても異なるのが実態だろう。テレワークをスタンダードな働き方として定着させるには、福利厚生の充実なども課題の一つとなりそうだ。