企業の「後継者不在率」は66.1%、近年はやや改善傾向か

帝国データバンクは2020年11月30日、「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年)」の結果を発表した。この調査は、2020年10月時点の同社データベースと調査報告書に登録された全国・全業種の企業から、事業継承の実態を分析できる約26万6,000社について調べ、2011年から毎年10月に行われてきた定点調査と照らし合わせて推移を分析したもの。これにより、後継者不在率と企業動向が明らかとなった。

「後継者が不在の企業」は全国で約17万社

企業の後継者不在率は、改善傾向にあるのだろうか。はじめに、「全国・全業種における後継者不在率の推移」を見ると、2020年は65.1%の約17万社となった。2017年の66.5%から、年々下降している。
企業の「後継者不在率」は66.1%、近年はやや改善傾向か

経営者が40~70代の企業はやや改善傾向か

「後継者不在率」を社長の年代別に見ると、2020年において先述の全国平均65.1%を下回った年代は「60代」(48.2%)、「70代」(38.6%)、「80代以上」(31.8%)となった。経年で見ると、「40代」~「70代」については、いずれも年々低下しており、調査開始以来最も低い。特に、「50代」では7割以下、「60代」では5割以下という結果となった。
企業の「後継者不在率」は66.1%、近年はやや改善傾向か

「後継者不在率」が最も高かった都道府県別は?

次に、2020年の「後継者不在率」を都道府県別に見ると、最も高かったのは「沖縄県」で81.2%と、全国平均の65.1%を大きく上回っている。一方で、最も低かったのは「和歌山県」で44.8%だった。

昨年から後継者不在率が低下した都道府県は18、昨年比で上昇は27となっている。主要都市を擁する都道府県では後継者不在率が低下しているが、周辺地域では上昇傾向にあると判明した。
企業の「後継者不在率」は66.1%、近年はやや改善傾向か

業種別では「建設業」が不在率最多に

業種別にみると、最も「後継者不在率」が高いのは「建設業」で、70.5%という結果に。全業種の中で唯一の7割台を示しているが、それでも2018年以降は低下傾向にある。また、最も低かったのは「製造業」で57.9%だった(「その他」を除く)。経年推移では、「サービス」や「卸売」、「不動産」では調査以来の最低値となった。その一方で、「小売」は唯一前年から上昇している。
企業の「後継者不在率」は66.1%、近年はやや改善傾向か

2020年の事業承継は「同族承継」が最多だったが、増えているのは「内部昇格」

最後に、2018年以降に事業承継をしたという企業に、「現経営者と先代経営者との関係性(就任経緯)」を尋ねた。すると、2020年の事業承継は「同族承継」の割合が34.2%と、全項目中最も多かった。しかし、この値は2018年と比較すると約10ポイント低く、「同族承継」による事業継続割合は減少傾向にあるといえる。

一方、血縁関係ではない役員などを「内部昇格」で登用した割合は34.1%と、同族承継の僅差に迫った。また、社外の第三者である「外部招聘」は8.3%で、いずれも割合が高まってきている。
企業の「後継者不在率」は66.1%、近年はやや改善傾向か
今回の調査では、「後継者不在率」は全般的に低下傾向にあるものの、依然として高い数値で推移しており、後継者をしている企業は多いようだ。将来も事業を継続できるように、いざというときの承継を視野に入れ、計画的な候補者選定や育成について、前もって取り組む必要がありそうだ。