日本のIT支出は新型コロナで減少後、2024年には平均2.6%増の見込み──ガートナーが業種別の予測を発表

ガートナージャパン株式会社は2020年11月13日、日本の業種別IT支出動向を発表した。新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年と、強い影響を受けた2020年の比較や、ニューノーマル(新常態)が浸透する2024年までの5年間のIT支出の推移と動向を予測している。

新型コロナで業界ごとに波はあるものの、5年後には「IT支出は増加する」と予測

新型コロナウイルス感染症拡大は、世界経済に多大な影響をおよぼした。すでに多くの業界ではビジネスが再開しつつあるが、IT支出において、特に深刻な影響を受けると予想される業種に「卸売」、「製造/原燃資源」、「運輸」の3つがあげられている。これらの2019年から2024年までの年平均成長率(以下、CAGR)は、それぞれ0.8%、1.3%、1.5%となる見通しだという。

ガートナーは、2020年の日本全体のIT支出は「前年比2.6%減」だと予想する。その背景には、消費税の増税やOSサポート終了への対応で高い成長率を示した2019年からの反動と、新型コロナの影響がある。しかし、2021年の前年比成長率は3.2%に回復する見込みだという。さらに、2019年から2024年までの5年間のCAGRは2.6%増で推移し、支出は32兆円に到達すると予測している。

2019年から2024年の5年間のIT支出の増加率は、「教育」が最も高いとされ、CAGRは4.1%になると予測。以下、「銀行/証券」が3.7%、「通信/放送/サービス」が3.4%、「政府官公庁/地方自治体」が3.3%と続く。同社のアナリスト/アソシエイトプリンシパルの成澤理香氏は、「新型コロナにより、日本ではこれまでITに十分な予算をかけられなかった教育機関において、学習継続性が特に社会問題として浮き彫りになった。これを機に、文部科学省による1人1台のパソコンを使った教育『GIGAスクール構想』の前倒しや、オンライン学習をサポートするためのIT機器投資が支出を牽引する」と予測している。

また、2019年に支出が最多だった「製造/天然資源」の成長率は、2020年には前年比マイナス8.8%が見込まれるものの、2019年から2024年のCAGRは1.3%と底堅く推移すると予測。ヘルスケア商品や食品などの必需品を除く製品需要がグローバルで減少しているのに加え、サプライチェーンの混乱もあり、生産計画は遅延気味となっているという。そのため同業界では、キャッシュの確保が優先課題で、コストの最適化に注力している傾向が見られるようだ。今後サプライチェーン回復のためには、「IoTやAI」、「スマートロボット」、「画像認識」、「クラウド・サービス」といったデジタル技術を活用した自動化や省力化が進むと想定され、成長率は底堅く推移すると予測している。
日本のIT支出は新型コロナで減少後、2024年には平均2.6%増の見込み──ガートナーが業種別の予測を発表
ニューノーマル時代、企業のIT導入はさらに加速する見込みだ。長期的な人件費の削減に取り組むため、人の手で行っていた作業も次々にデジタル化していくだろう。今後の企業発展には、ITや人材の適切な配置を見極めていくことが重要かもしれない。