豪シドニーに本社を置くソフトウェア企業のアトラシアンは2020年10月22日、日本を含む海外主要5ヵ国のリモートワークに関するグローバル調査レポート「働くを再創造する『どこでも働ける勤務形態』を考える(Reworking Work : Understanding The Rise of Work Anywhere)」を発表した。調査期間は2020年4~6月で、日本、オーストラリア、フランス、ドイツ、アメリカの従業員250人以上の会社で働く約5,200名から回答を得た。これにより、日本におけるリモートワークの課題が明らかとなった。
日本の約4割がリモートワークに難しさを感じている
新型コロナウイルス感染症(以下:COVID-19)は、世界各国で個人/組織/チームの働き方に大きな影響を与えた。日本と他の国を比較し、リモートワークで働く人々の生産性や満足度に違いがあるのか、回答結果をグローバル全体(全サンプル)と比較してみたい。はじめに、「COVID-19に伴う制限下で効率的にリモートワークを進める難易度」を尋ねた。すると、日本企業では「非常に簡単だった」が5%、「簡単だった」が10%と、容易だと捉えていたのは合計15%にとどまった。一方、「非常に難しかった」が11%、「難しかった」が33%で合計44%となり、難しさを感じたビジネスパーソンの方が多いことが明らかとなった。
世界5ヵ国の平均(全サンプル)を見ると、「非常に簡単だった」が33%、「簡単だった」が33%と、グローバル全体では簡単だったと回答した人の方が多く、合計66%と過半数以上が特に困難を感じていなかったことがわかった。
日本は「オフィス勤務」や「オフィス+出社」を好む傾向が
次に、「リモートとオフィスを選択できるとしたら、どちらを選ぶか」と尋ねた。「リモートのみで良い」とした人は、日本が21%、グローバル全体が35%で、日本は5ヵ国平均と比べて低い。「リモートとオフィスのハイブリッドが良い」とした人は、日本が56%、グローバル全体が46%で日本が高く、半数以上がリモートと出社を組み合わせて働きたいと思っていることが判明した。「オフィスのみで良い」は、日本が23%、グローバル全体が20%と、わずかながら日本の方が多かった。また、「自分の所属する企業がリモートワークにうまく対応ができたか」という質問では、日本は「できていない」が48%と、半数近くにのぼった。一方で、グローバル平均の全サンプルは29%で、日本より対応が進んでいた国が多いようだ。
そのほか、日本では44%が「リモートワークでは効率的に業務を進められない」と回答した。その理由のひとつに、日本独自の商習慣である紙書類の手配や押印手続きが挙げられ、出社しなければ業務が進まないケースがあるものと推測される。
「会社に対する満足度」は諸外国と比較し大きくギャップあり
最後に、パンデミックの影響が急速に広まった状況下で、リモートワークにおける会社への満足度をヒアリングした結果に注目したい。調査では「リーダーシップ」、「ワークライフバランス」、「チームワーク」の3つの観点において測定している。「リーダーシップ」の満足度を見ると、日本は18%と、各国と比べ最も低い。グローバル全体では41%で、日本とは2倍以上の開きがあった。同様に、「チームワーク」も日本は17%と5ヵ国中最も低く、グローバル全体の40%と比較すると半分以下と言う結果に。「ワークライフバランス」については、日本の31%に対して、全体平均は44%だった。
グローバル全体の数値は、3項目とも4割以上の人が「満足」と回答しているのに対し、日本はいずれも平均の数字を下げている格好だ。日本のリモートワーク体制は、他国に比べて整備が遅れ気味だといえるだろう。
非常事態によって急速に進んだ「リモートワーク」という働き方に、準備が十分に整わないまま踏み込んだ日本企業もあるだろう。実際に業務効率が停滞し、従業員の働く満足度が下がってしまったケースもあったものと思われる。企業は、リモートワークで業務を進めるにあたり弊害となる非効率なフローを見直し、今後に向け働く環境を再創造していくことが求められている。