企業経営者はSDGsをどう捉えているのか。認知度や取り組み状況、推進する上での課題が明らかに

一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)は2020年10月、「2020年度(第41回)当面する企業経営課題に関する調査」の結果を発表した。本調査は、JMAが1979年より実施しているもの。今年度は2020年7~8月に調査を行い、同社の法人会員ならびに評議員会社と、サンプル抽出した全国主要企業の経営者、計532名から回答を得た。今回は、その中から「SDGsの認知度と取り組み状況」の結果をまとめ、その変化などを探った。

経営者層のSDGsの認知度は9割に迫る

SDGs(国連が提唱する持続可能な開発目標)の達成に向け、企業はどのように取り組んでいるのだろうか。はじめに「SDGsの認知状況」を尋ねところ、「知っている」が70.5%、「ある程度、知っている」が17.9%で、合計して88.4%の経営者が「知っている」と回答した。昨年度と比べて11.5ポイント増加し、認知度が年々高まっていることがわかる。

従業員別にみると、大企業(従業員数3,000人以上)では「知っている」が89.3%、「ある程度、知っている」が7.6%と、合計96.9%が認知していた。中堅企業(従業員数300人以上3,000人未満)では合計89.9%、中小企業(300人未満)でも76.5%という結果だった。
企業経営者はSDGsをどう捉えているのか。認知度や取り組み状況、推進する上での課題が明らかに

SDGsに取り組む企業は6割超。遅れている中堅・中小企業も今後進めたい構え

次に、「SDGsに関わる活動の取り組み状況」を尋ねた。すると、「具体的な目標を設定して取り組んでいる」が25.2%(前年比+11ポイント)、さらに「具体的な目標の設定はしていないが、SDGsに沿った活動を行っている」が36.5%(前年比+9.8ポイント)と、合計61.7%(前年比+20.8ポイント)の企業がSDGs推進に向けた取り組みを行っていた。

従業員規模別に見ると、大企業では先述の「取り組んでいる」の合計が88.5%となり、9割に迫る。なお、中堅企業では59.4%、中小企業では39.3%となり、企業規模が小さいほど出遅れているようだ。しかし、「今後、取り組みたいと考えている」という回答が、中堅企業では30.5%、中小企業では39.4%となっていることから、活動のさらなる広がりが期待される。
企業経営者はSDGsをどう捉えているのか。認知度や取り組み状況、推進する上での課題が明らかに

SDGsに取り組む目的として企業が重視するものとは

続いて、「取り組んでいる」と回答した企業に、「SDGsに取り組む目的」を尋ねた。その結果、最も多かった回答は「企業の社会的責任を果たすこと」で、「非常に重視している」が36.9%、「重視している」が48.2%と、合計で8割を超えた。以下、「中長期的な企業価値を向上させること」(合計76.8%)、「企業ブランドを向上させること」(合計66.2%)、「社員のモチベーションや帰属意識を高めること」(合計61%)と続く。企業価値向上や社内外からのイメージアップなど、あらゆる目的からSDGsに取り組んでいることがうかがえる。
企業経営者はSDGsをどう捉えているのか。認知度や取り組み状況、推進する上での課題が明らかに

企業が直面しているSDGsの課題とは

また、既に取り組んでいる企業に「SDGs推進における課題」について尋ねたところ、「おおいに課題である」、「課題である」、「やや課題である」の合計が最多となったのは「自社の取り組みに対する社員の認知度向上」で、合計83.2%だった。次いで「取り組みについての具体的な目標・KPIの設定」(合計82.3%)、「社内推進体制の構築」(合計76.2%)、「戦略との統合マネジメントシステムへの実装」(合計73.8%)、「新しい商品・サービス・事業の開発に結び付けること」(合計72%)と続き、社内の推進体制の構築、整備に関わる課題が上位に挙がった。
企業経営者はSDGsをどう捉えているのか。認知度や取り組み状況、推進する上での課題が明らかに
2030年の目標達成まで10年を切った今、SDGsの認知が広がり、取り組む企業も増えていることがわかった。SDGsに貢献できる経営を実現するためには、経営層から社員へその意義と達成目標を広め、全社で課題に向けて具体的に取り組むことが求められるだろう。