株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(以下、RMS)は2020年8月25日、「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査」の結果を発表した。調査時期は2020年1月、企業の人事担当者と管理職(マネージャー・課長・部長)それぞれ150名から回答を得た。これにより、人事担当者と管理職層のそれぞれが抱く、マネジメント業務に対する認識の違いが明らかとなった。
組織運営には多くの「課題」がのしかかる
ビジネス環境の変化により、マネージャー・課長・部長といった管理職層の業務は難易度を増すばかりだ。同時に、業務負荷の蓄積により、組織マネジメントを管理職層のみが担うことは難しくなってきているといえるだろう。その要因として、「社内外環境の変化」、「管理職本人の経験値」、「管理職にかけられる期待」の3つがあげられる。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策からテレワークを導入した企業もあり、追い打ちをかけるように「仕事の質」と「生活の質」の担保も求められるようになった。現在の管理職層には、常に多くの課題がのしかかっているといえる。
管理職の負荷は高まる一方で、上層部の意識には差が
そこで、RMSは人事担当者と管理職それぞれに対して調査を実施した。はじめに、会社の組織課題の例をあげて、それぞれが「会社の組織課題」、「会社の3~5年先を考えた際、人や組織に関わる取り組み課題のなかで重要度が高いもの」、「計画や方針に関わる人・組織の課題」としてどの程度当てはまるかの回答を得た。その結果、「よく当てはまる」もしくは「やや当てはまる」が最も多かった回答は、管理職層では「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」で68.7%、人事担当者では「次世代の経営を担う人材が育っていない」で78.7%という結果に。管理職はミドルマネジメント層の負担を1位にあげているのに対し、人事担当者は、次世代の経営担当者や中堅社員の定着が気になるようだ。人事担当者と管理職層の認識にギャップあり
前述の設問から、人事担当者に「計画や方針に関わる人・組織の課題」について尋ねた。企業の3~5年先を見据えて「人事や組織に関する課題」において、方針や計画にすでに盛り込まれている項目を質問すると「新人・若手社員の育成・戦略化」が48%と最多に。次いで、「人材の定着率向上(離職率の軽減)」(39.3%)、「時期経営幹部育成」(34.7%)となった。なかでも最も重要なのは「新人・若手社員の育成・戦略化」、「人材定着率の向上(離職率の軽減)」が同率で16.7%となっている。多くの企業で、新人や若手の育成、人材の定着が急務であり、会社としての方針にも組み込まれていることがわかる結果だ。一方で「管理職の負担軽減」を重要度が高いとあげる人事担当者は21.3%に留まり、両者の認識や実行している施策にはギャップがあることが明らかとなった。「メンバー育成」は上層部共通の課題
次に「人事担当者が管理職層に対して期待していこと」と「管理職層が重要だと考えている管理職層の役割」を尋ねた。すると、人事担当者の50%が「メンバーの育成」と回答。以下、「担当部署の目標達成・業務完遂」(33.3%)、「部署内の人間関係の円滑化」(26.7%)と続いた。管理職層は「メンバーの育成」が54.7%と最多。次いで「業務改善」と「会社・事業の戦略テーマ(重点テーマ)の推進」がいずれも30.7%となった。人事担当者も管理職層も「メンバーの育成」が重要な役割だと認識していることがわかる。管理職が困っているのも「メンバーの育成」
上述の設問を踏まえて「管理職層が日々の業務で困っていること」を尋ねた。その結果、「メンバーの育成」が56%と最も多く、「業務改善」が52%、「目標達成のための業務推進」が46%と続いた。管理職層は、「メンバーの育成」を重要課題として認識しているものの、どのように育成すべきか悩んでいるケースが多いことが見えてくる。
管理職層が抱える課題は、人事担当者などほかの従業員には伝わりづらい、共有しづらいといった問題があるとみえる。そこでキーポイントとなるのは、組織課題を管理職のみの課題とせず、従業員を巻き込み「全員が組織運営の当事者」という意識をつくっていくことなのかもしれない。