帝国データバンクは2020年7月14日、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に関する企業の見解について調査結果を発表した。調査期間は2020年6月17日~30日。全国の1万1,275社から回答を得た。調査結果により、SDGsに対する企業の関心度や、実施に向けた課題などが明らかになった。
半数近くが「SDGs」を知りつつも、実際に取り組んでいる企業は8%
国連で「SDGs」が採択されてから5年が経過しようとしている。現在、民間企業のSDGsに対する意識や取り組みはどの程度浸透しているのだろうか。はじめに、「自社におけるSDGsへの理解や取り組み」を尋ねた。その結果、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」と回答した企業は8%にとどまった。「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」の16.4%と合わせると、24.4%となり、約4社に1社がSDGsに積極的だとわかる。実際に取り組んでいる企業からは、「SDGsであげられている項目は全て未来に引き継ぐべき目標だ。地球のために企業の大きさを問わず取り組むべきだと感じている」といった声があがっている。
一方で、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」が32.9%、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」が14.8%となった。SDGsの存在は知っているものの、取り組んでいない企業が半数近くにおよぶことも明らかとなった。
中小企業を中心に、SDGsに取り組んでいないという企業からあげられた声の中には、「環境などを守るためには、現在よりも性能の高い機材の導入が必要で、材料のコストも高くなる。資金力が必要となるが、大企業と同じようにはできない」などがあった。
大企業ではSDGsに積極的な姿勢が見られるが、中小企業や小規模企業では重要だと感じていても取り組みに踏み込めない状況にあるといえそうだ。
17項目中、「働きがいも経済成長も」が各企業で最も力を入れている項目に
続いて、「SDGsの17目標のなかで、現在力を入れている項目」を尋ねたところ、8つ目の「働きがいも経済成長も」が27.1%と最多だった。働き方改革といった注目されているテーマを含んでいることが理由といえるだろう。次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が15.9%、「つくる責任からつかう責任」が14.8%、「気候変動に具体的な対策を」が14.7%となった。企業活動との関連性が高い項目は実施企業も多い傾向だ。一方で「貧困をなくそう」(5.5%)や「飢餓をゼロに」(3.1%)は、低位にとどまった。
また、「今後最も取り組みたい項目」を尋ねると、「働きがいも経済成長も」との回答が14.8%と最多。次いで「パートナーシップで目標を達成しよう」が6%、「エネルギーをそしてクリーンに」が5.6%と続いた。しかし、現在と今後のいずれにおいても「分からない」と回答する企業も多く、「具体的にどのあたりを目標として掲げるべきか分からない」といった意見があげられている。
SDGsの達成への貢献により、「企業好感度」や「社会的価値」の向上を目指す企業が半数
次に、「SDGsの達成への貢献により、どのような企業価値の向上に役立つと感じているか」を尋ねた。その結果、「企業好感度」に関しては「非常にそう思う」、「ある程度そう思う」との回答が合計53.3%と半数を超えた。さらに、「社会的評価」も「非常にそう思う」と「ある程度そう思う」の合算が50.4%と5割を上回った。回答結果により、SDGsに取り組むことで外部からの見られ方に好影響があるという意見が多く見られた。
付加価値を生むために取り組みたいテーマは「顧客・人財確保」が最多
SDGsの達成に向けて地域や国際社会に付加価値を生むテーマについて、「インパクトが大きいと考えるもの」を尋ねた。すると、「顧客・人財確保」が33.8%と最多に。次いで、地域ワーク・シェアリング(複業化)につながる「適正な労働時間・環境・内容」の回答は30%となり、「人」に関連した項目が上位を占めた。これについて企業からは、「従業員の『働きやすさ』と『やりがい』が業績や社員の収入にきちんとリンクして経営させる」や「地域雇用を創出し、生活・経済の活性化を図る」という声があがっている。
また、3位はゼロ・エミッションに関連する「気候変動・環境汚染を起こさない原材料・生産工程」で24.6%、4位はゼロ・ウェイストにつながる「ゴミを出さない・全て資源で活用する原材料・生産工程」で22.2%となり、環境面へ配慮する項目が続いた。
企業経営上、最も大切にしているのは「顧客・従業員満足度」
最後に、ビジネスの目的や企業理念など、「企業経営上大切にしていること」の上位3つを尋ねた。総合順位でトップになったのは「顧客・従業員満足度」(3.32ポイント)となり、企業経営の中で最重要視していることが明らかとなった。「顧客・従業員満足度」を1位にあげた企業は45.6%と半数近くだ。総合順位で2位になったのは、「自社の事業拡大」(2.22ポイント)。「自社の事業拡大」を1位にあげた企業は29.9%となった。
企業からは、「小さな会社ということもあり、持続的な成長として顧客、従業員満足度を高めることを第一に考えている」、「従業員満足度を上げることで、従業員が地域で貢献し、地球環境にも貢献できるように繋がっていければいい」など、「人」へ尽力する声が聞かれた。
これまでSDGsは政府や自治体を中心に展開されてきたが、近年は民間企業でも積極的な取り組みが見られるようになった。しかし、今回の調査結果で、SDGsという言葉を知りながらも取り組めていない企業は、半数近くある現状が明らかになった。長期的な自社の発展に向けて、SDGsの達成に貢献しうる活動を社内で行ってみてはいかがだろうか。