マーサージャパン、役員報酬処遇についての調査結果を発表。日本企業の25%で固定報酬減額か

人事・組織のコンサルティングに携わるマーサージャパン株式会社(以下、マーサー)は、2020年6月18日、「先行き不透明な景気後退時における役員報酬処遇に関するスナップショットサーベイ」の結果を発表した。調査は2020年5月までの期間で、117社を対象におこなわれた。新型コロナウイルス感染症拡大により業績の見通しが立たない中、役員報酬の削減といった具体的な措置をとれている企業は限定的であることがわかった。

固定報酬の減額措置を実施・検討しているのは全体のわずか25%

今回のコロナ禍により、役員報酬の削減について議論を始めている企業も多いのではないだろうか。はじめに「今年度の固定報酬の減額措置を検討しているか」を尋ねた。「既に減額を実施した」と答えたのは117社中12社、「減額する予定」と答えたのは17社と、あわせて29社で、全体の25%の企業で減額措置を検討していることがわかった。ほか75%の企業は「減額しない予定」、「わからない」と答えている。
マーサージャパン、役員報酬処遇についての調査結果を発表。日本企業の25%で固定報酬減額か

減額措置の対象は「代表取締役全て」が最多

また「減額措置はどこまでの層を対象としているか」を尋ねると、「代表取締役全て」と答えたのは19社と最も多かった。次いで「取締役全て(代表取締除く)」が16社、「執行役員全て」が14社という結果となった。
マーサージャパン、役員報酬処遇についての調査結果を発表。日本企業の25%で固定報酬減額か

減額対象として検討しているのは固定報酬の10~20%

減額対象として検討しているのは「固定報酬のうち何%相当か」を質問すると、10%から20%と答えた企業が多かった。一方で、マーサーが欧米企業を対象に独自でおこなった調査によると、欧米企業のCEOは固定報酬の30%~60%を削減しているようだ。日本企業と欧米企業で大きな差が生まれたのは、役員報酬水準が世界的に低い日本で、これ以上減額するのは難しいという構造的な要因があることが推測できる。

マーサージャパン、役員報酬処遇についての調査結果を発表。日本企業の25%で固定報酬減額か

変動報酬、約7割の企業で変更せず支給

続いて「次回支給予定の業績連動報酬について、支給額の調整を検討しているか」を尋ねた。「現行の算定式・KPIを変更せず支給する」と答えたのは117社中84社と全体の70%超に及んだ。「現行の業績連動報酬算定式を変更して減額(業績悪化による減額以上に支給額を下げる)」は14社、「現行の業績連動報酬算定式を変更して救済(業績悪化による減額では支給額が下がりすぎるため救済)」が15社となった。
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中長期インセンティブに関しても、減額の検討をしていない企業が9割

今年度の中長期インセンティブについて、見直しを検討しているか尋ねた。「現状変更予定なし」と答えたのは68社と最も多く、「分からない」と答えた39社とあわせて91%(107社)が変更を予定していないことがわかった。「減額する方向で検討」と答えたのは9%(10社)となり、業績連動報酬(STI)が12%、中長期インセンティブ(LTI)が9%と、変動報酬はそれぞれ約1割の企業で減額する方向で調整が進んでいるようだ。

コロナ禍よって先行き不透明な状態が続く中、報酬削減をどの程度おこなうべきなのか、見定められていない企業が多いようだ。先が見通せない状況で「報酬削減」だけが、はたして最適な方法なのか冷静に見極める必要はあるだろう。「株主・投資家への説明責任・コミットメントの観点」とともに、中長期的な業績回復や事業創造に向けた経営を考える役員層への「適切なインセンティブとして機能する役員報酬の在り方」の両サイドから検討をする必要がありそうだ。
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