厚生労働省、新型コロナウイルス感染症拡大による雇用調整助成金の手続を大幅に簡素化

厚生労働省(以下、厚労省)は2020年5月19日、新型コロナウイルス感染症拡大による雇用調整助成金について、申請手続の簡素化に関する具体的な内容を発表した。これにより、事業主の申請手続の負担を軽減し、また支給事務の更なる迅速化を図っていくとしている。

小規模事業主の申請手続を簡略化。助成額の算定が容易に
これまで雇用調整助成金の支給申請では、従業員1人あたりの平均賃金額を元に、助成額の算定をおこなってきた。しかし申請手続きの簡略化により、従業員20人以下の小規模事業主については「実際に払った休業手当額」から助成額を簡単に算定できるようになった。変更後の助成額は、「実際に支払った休業手当額」×「助成率」で算出される。

また、休業に関する申請様式を簡略化し、支給申請の円滑化に向けて申請マニュアルが作成された。

特例として休業等計画届の提出が不要に
従来は、雇用調整助成金の支給を受ける際、事前に休業等計画届を提出する必要があった。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、特例として2020年6月30日までの事後提出が可能となり、2回目以降の提出は不要となっていた。

そうした中、申請手続きを更に簡略化するため、初回を含み休業等計画届の提出が不要となった。これにより、必要な手続きは支給申請のみに。なお、休業等計画届と同時に提出することとなっていた書類の一部については、支給審査に用いられるため、申請の際に提出が必要だ。

小規模事業主以外の事業主も助成額の算定方法を簡略化
小規模事業主以外の事業主についても、支給申請の際の助成額の算定方法が簡略化された。

1.「1人当たりの平均賃金額」の算定
 「労働保険確定保険申告書」のほか、「源泉所得税」の納付書で算出が使用可能に

2.「所定労働日数」の算定
 ・「年間所定労働日数」は、休業等実施前の任意1ヵ月をもとに算定
 ・「所定労働日数」の計算方法を簡略化
※詳細は雇用調整助成金の支給要項に記載

雇用調整助成金の申請期限を延長
雇用調整助成金の申請期限は、「支給対象期間末日の翌日から2ヵ月以内」となっている。しかし、新型コロナウイルス感染症により休業することになった場合、特例として申請期限が延長されることになった。「支給対象期間の初日が2020年1月24日から5月31日」の間であれば、休業の申請期限は「2020年8月31日まで」となる。

また、支給申請の際は給与明細の写しなどを添付するが、賃金締切日以降も休業手当に係る書類など必要書類が確定していれば、支給申請が可能だという。



なお、厚労省では上記のほか、「5月20日よりオンラインでも申請できるようにする」としていたが、システム不具合のため現在稼働を見合わせている。

今回の一連の変更により、雇用調整助成金の申請手続きは大幅に簡素化された。助成金の活用を検討しながらも、手続きの煩雑さなどを懸念して申請をためらっていた企業にとっては、よい機会が訪れたといえるだろう。従業員の雇用を維持しつつ、経営への影響を最小化するために、助成金の積極的な活用を進めてみてはいかがだろうか。