企業向けトータルヘルスケアサービスを展開する株式会社メディカルコンチェルトは、2020年5月、「COVID-19による在宅ワーク拡大の影響と健康・メンタルヘルス管理に関する実態調査」の結果を発表した。対象は経営者・役員で、期間は4月1日~4月30日。この調査から、退職率が低い企業、売上が高い企業の共通点などが明らかとなった。
「生産性の向上」が、リモートワークにおける最重要課題
新型コロナウイルスの感染症拡大を受け、リモートワークの導入が1ヵ月足らずの間に急速に進んだため、十分な準備をできないまま制度を開始した企業も多いだろう。そこで、メディカルコンチェルトは、リモートワーク環境下での社員の健康管理・メンタルヘルスケアに関するアンケート調査を実施した。最初に、リモートワークを継続する際の重要課題について尋ねたところ、最も多かった回答は「生産性の向上」で、51%と半数を超えた。次いで、「マネジメント方法の変更」(40.8%)、「在宅ワークの環境整備」(36.7%)、「健康管理」および「メンタルヘルス管理」(ともに28.6%)となった。
今後、リモートワークの環境整備が進むとともに「生産性の回復」や「マネジメント方法の確立」は進んでいくと見られる。一方、従業員の「健康管理」や「メンタルヘルス管理」については、外部機関に委託している企業も多いため、健診管理や面談のオンライン化に対する需要は今後より一層高まると予想される。
約半数が、健康管理・メンタルヘルス管理について、産業医など専門家への依頼を検討
従業員の働きやすさ向上やオフィスコスト削減などの理由から、緊急事態宣言終了後もリモートワーク継続を検討している企業もあるという。リモートワークが長期化した場合の「従業員の健康・メンタルヘルス管理の仕方」について聞くと、産業医などの専門家へ依頼を「考えている」と回答した企業は46.9%と、半数近くだった。産業医の雇用義務は従業員数50名以上から発生するが、従業員数26~50名未満の企業でも80%に及んだ。「専門家への依頼」を検討している企業は、退職率が低く企業や売上が高い傾向に
また、「1年以内の退職率」と「売上高」を上記の質問に当てはめると、産業医の相談を「考えている」と回答した企業のほうが、1年以内の退職率が低く、売上高が大きい傾向にあることも明らかとなった。産業医など専門家への依頼を検討する背景には、従業員の増加に従いメンタルヘルス問題への個別対応が難しくなること、IPOなどを見据えた企業がメンタルヘルス面の対策をすることなどがあると考えられる。こうした課題に向き合うことが、退職率や売上高にも影響していると推測できる。経営者の約半数は、「相談できる人がいない」
専門家への相談を「考えていない」と回答した人にその理由を尋ねると、46.2%と約半数が「相談できる人がいない」と答えた。スタートアップ企業や、産業医雇用義務がない従業員50名未満の企業では、「産業医」、「臨床心理士」、「産業保健師」といったメンタルヘルス管理の専門家が身近ではないと予想される。産業医の代役としては、「地域産業保健センター」や、50名未満の企業を対象とした「オンライン産業医相談サービス」、「スポット産業医面談サービス」などがある。アフターコロナの世の中を見据え、こうした専門家やサービスを活用しながら、従業員の「健康管理」や「メンタルヘルス管理」の体制を整備していくことが求められそうだ。