EY Japanは2020年4月、「第22回EYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(CCB22)」の結果を公表した。この調査は、経済の見通しに対する企業の信頼度を数値化し、経営層のキャピタルアジェンダの管理傾向を分析するために実施したもので、対象は46ヵ国2,900名以上の経営層。これにより、日本企業の経営者が考える経済回復の見通しや、M&Aへの意欲などが明らかになった。
日本を含むAPAC企業が、経済についてより悲観的に予測
新型コロナウイルス感染症拡大が世界経済にもたらす影響について調査したところ、日本企業(ここでは日本に本社を置き、グローバルで展開している企業を指す)の96%、Asia-Pacific(APAC)企業全体の94%が、サプライチェーンへのディスラプションや消費の減少により、「深刻な影響がもたらされる」と予測していることが分かった。回答者全体を見ると、同様の予測をしている企業は73%だったことから、日本を含むAPACがより悲観的な予測をしていることが伺える。また、APAC企業の58%、日本企業の70%が、コロナ危機により「自国の経済に多大な影響を与える」と考えていることも明らかとなった。日本企業の半数が「景気回復は2021年までかかる」と回答
現状、全てのセクターが、新型コロナウイルスの影響を直接的・間接的に受けている状態だ。収益について聞くと、回答者のほぼ全員が「新型コロナウイルス感染症拡大による収益の低下が起こる」と回答。また、日本企業では回答者の50%が「経済回復は緩やかであり、2021年までかかる」と想定していることが分かった。日本企業の経済成長予測については、これまでの調査と比べて大きな変化が見られた。1年前の調査では「経済成長に明るい見通しがある」と答えた日本企業の経営層は93%だったが、今年2月上旬には23%まで急低下し、さらに3月末になると13%まで落ち込んだ。この結果から、2月中旬を境に、経済成長予測が急変したといえるだろう。
サプライチェーンの再構築に向けた動きが進む
世界中で企業活動停止の動きが相次いでいる。そうした中、多くの企業において、サプライチェーンの脆弱性が明らかになった。コロナ危機に対応するため、企業経営層はオペレーティングモデルの見直しに取り組んでいる。実際、APAC企業の67%、日本企業の74%が「既存のサプライチェーンの再構築」に向けて動き出しているようだ。それと同時に、世界各国の政府は、新型コロナウイルス感染症の影響を最小限にするべく、景気対策を積極的に進めている。日本やAPACの各国政府は、既に「雇用の維持」や、個人または中小企業への「現金給付」、「納税猶予」といった経済対策を打ち出している。
また、日本企業はこの危機の収束後を見据え、「サプライチェーン見直し」(74%)、「デジタルトランスフォーメーション推進」(28%)、「オートメーション加速」(50%)、「従業員の管理体制強化」(50%)に着手していると回答している。
日本企業のM&Aへの意欲は、変わらずに高い
続いてM&Aについて聞いたところ、日本企業の57%が「今後1~2年以内に積極的にM&Aを行なっていく」と回答している。また、80%が「今後1年間で買収競争が激化する」、「買収競争が、投資資金を豊富に持つPE(プライベートエクティ)などプライベートキャピタルによるものになる」と考えていることも明らかになった。新型コロナウイルス感染症の影響はまだ続いているが、企業にはアフターコロナなどを見据えた施策を講じていくことも求められる。今後はM&Aなどにより、さらに企業価値を高めていく必要があるだろう。