総合人材サービス会社ランスタッド・エヌ・ヴィーは、四半期に1回、世界34カ国と地域を対象に労働者意識に関するグローバル調査「ランスタッド・ワークモニター」を実施している。今回、「ワークライフバランス」に関連した項目に焦点を当て、2019年第4四半期の調査結果と、2015年実施時との比較データを発表した。働き方改革が進んだことにより、日本の労働環境には改善の兆しが見られるという。
「時間外労働」や「時間外の業務対応」を期待されていると感じる人は減少傾向
日本では、2016年に「働き方改革実現会議」が発足し、2019年4月には大企業を対象として、残業時間の罰則付き上限規制を含む「働き方改革法」が施行された。この改革により、時間外労働に対する労働者の意識はどう変化したのだろうか。勤務時間外に「働くこと」や「電話、メール、テキストメッセージで連絡が取れること」を職場から期待されているかを聞いたところ、調査対象の国・地域の労働者の平均値は2015年調査から大きな変化は見られなかった。
しかし日本に限定すると、「勤務時間外に働くこと」を期待されているという考えに「同意する」と答えた労働者は37%と、2015年調査の46.2%から10%近く減少した。また、勤務時間外に「電話、メール、テキストメッセージで連絡が取れること」についても、2015年調査は52.1%、今回の調査は43%と、同じく10%程度減少していることがわかった。
「時間外の連絡」や「休暇中」に対応する人も減少傾向
次に、「勤務時間外の連絡に即座に対応する」または「休暇中も業務に対応する」かどうかについて調べたところ、調査対象の国・地域の「同意する」の平均値は微増という結果となった。一方、日本では、「勤務時間外の連絡に即座に対応する」は9.2%減、「休暇中も業務に対応する」は7.2%減と、いずれも減少していることがわかった。日本では、勤務時間外の対応に関する職場からのプレッシャーが減少したことに加え、労働者側の「対応しなければいけない」という意識も変化していると推測される。企業・労働者の双方に、ワークライフバランスを改善したいという意識が広がっているといえるだろう。
働き方改革の推進により、男性のワークライフバランスに変化が
日本の労働者の結果を男女別で比較したところ、「勤務時間外に連絡が取れることに対する職場からの期待」に限って、減少傾向は女性の方が高かった。一方、それ以外の項目では男性の減少傾向の方が高いということも判明した。特に顕著に表れたのが、「勤務時間外の連絡に即座に対応する」と「休暇中も業務に対応する」の2点に対してだった。女性はどちらも2%程度の減少にとどまったが、男性はどちらも10%以上減少している。この結果から、ここ数年の間で、日本の男性の働き方に対する意識が大きく変化したと推測できる。働き方改革の推進により、日本の労働環境は改善傾向にあるといえそうだ。しかし、総務省が実施する「労働力調査」では、残業の罰則付き上限が導入されてもなお、月に80時間以上残業をしている労働者が約300万人いるという結果が出ている。その背景には、「労務管理が厳格になったことにより、サービス残業が表面化し、数値が上がった」「部下が残業削減した分の業務を管理職が代わりに担っている」といったさまざまな要因があると考えられる。
「労働時間の見直し」という第一ステージが実を結びつつあるという日本の現状。今後、働き方改革をさらに推進させるためには、「テクノロジーの導入」や「社内外で蔓延する過剰サービスの見直し」、「業務の遂行方法の再考」などにより、労働生産性の改善をはかる必要があるだろう。