「イノベーションを起こす大企業実現に向けて」の提言。企業調査の中間報告を公表

公益財団法人日本生産性本部は2019年12月、企業のイノベーション力強化に向けた調査の中間報告を公表した。アンケートとヒアリングでの調査は2018、19年の秋に実施。上場企業と、資本金3億円以上の非上場企業を対象に行われた。企業経営における意志決定の迅速化や人事制度の改革など、企業内変革が重要との見解を示している。

イノベーションが起こりにくい日本企業。経営の消極性が浮き彫りに

近年、世界経済における日本の地位低下が指摘されている中、日本企業の生産性の低さやイノベーションの低迷が問題となっている。このような状況で必要とされているのは、既存事業の秩序を破壊し、業界構造を劇的に変化させる「破壊的イノベーション」の実現だ。

組織と人材のあり方について先進的な取り組みを行う日本生産性本部の「イノベーション会議」は、「イノベーションを起こす大企業の実現に向けて」と題した調査の中間報告を公表した。日本企業が破壊的イノベーションを起こしにくい背景として、「企業経営がイノベーションのリスクを取ることに消極的」という回答が67%にもおよんだ。その理由としては「失敗が許容されにくい人事制度や企業風土」、「意思決定の遅さ」などの意見があがり、日本の企業風土全体に変革が求められていることがうかがえる。

企業のイノベーション力を上げるために必要な「経営視点」とは

また、イノベーション会議は、企業風土の変革や破壊的イノベーションを起こすのに有効だとされる「出島」と「オープンイノベーション」の担い手に関するヒアリングも行っており、企業のイノベーション力強化に必要な経営視点が明示されている。

日本企業の旧態依然とした「イノベーションのリスクを取ることに消極的な経営視点」を変えるためには、「リスクへの挑戦ためらわない企業風土づくり」や「失敗をマイナスとしない人事評価制度づくり」が必要となるとしている。また、イノベーションを起こす人材を確保するためには社内・社外を問わずに人材を得ること、意識的に多様性を持ち込むことを推奨している。

オープンイノベーションを成功させるためには意思決定のスピード感や、相手組織との信頼関係をいかに醸成させるかが鍵となるようだ。

一方、イノベーション創出ために本社から切り離した組織「出島」を置く出島戦略を成功させるためには、本社から出島へ権限移譲するといった思い切った施策をおこない社員が「失敗できる環境」を与えることや、出島と本社をつなぐ役割を重視することが重要であるとしている。

今後日本企業の経営者には、長きにわたって培われてしまった企業風土を思い切って変革し、リスクを恐れずにチャレンジしようとする姿勢が求められる。多様な人材の組み合わせによるイノベーションが、企業成長の推進力を生むことにつながるだろう。