2020年4月1日、改正労働者派遣法が施行となり、雇用者は派遣労働者(派遣社員)を「同一労働同一賃金」で待遇しなければならなくなった。加えて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行で派遣社員も出社が難しくなり、在宅でテレワークとなる例が増えている。「同一労働同一賃金」と「テレワーク」の普及状況と、それが派遣社員のマネジメントや人材戦略にどのような影響を及ぼすのかを探るために、アデコ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川崎健一郎)とHR総研(ProFuture株式会社)は共同で「派遣社員の『同一労働同一賃金』と『テレワーク』に関するアンケート調査」を実施した。なお、調査は2020年6月26日〜7月27日にかけて人事担当者および人事責任者を対象に行い、181件の有効回答を得た。
調査対象企業の人材派遣サービスの活用状況は、「全社的に活用している」企業が18%、「部門や部署によっては活用している」企業が55%と、7割以上の企業が何らかの形で人材派遣サービスを活用していた。また、「今は活用していないが過去には活用していた」(9%)と答えた企業も約1割あった。
人材派遣サービスを「活用している」、あるいは「活用していた」と回答した調査対象に限って、人材派遣サービスを活用する理由について、複数選択方式で回答してもらった。その結果、最も多かった回答は「臨時・季節的な業務量の変化に対応するため」で55%となった。次いで多かったのが「即戦力人材を短期間で確保するため」(48%)、「正社員を増員できないため」(36%)だった。正社員を増員する予算がない状況で、即戦力となれる人材を臨時で増員するために人材派遣サービスを利用しているという企業が多いと考えられる。
次に、2020年4月施行の改正労働者派遣法で、派遣社員の「同一労働同一賃金」が義務づけられたことを知っているかどうかを尋ねてみた(図表1)。最も多かった回答は「内容も含めて知っている」で66%、次いで「概要だけ知っている」(26%)、「名前だけは聞いたことがある」(6%)、知らない(2%)という結果だった。
図表1派遣社員の「同一労働同一賃金」についてご存知ですか?(択一)
冒頭で述べたように、回答者が所属する企業の7割以上が何らかの形で人材派遣サービスを現在利用している。そのうち3分の2の企業が「内容も含めて知って」おり、さらに4分の1が「概要だけ知っている」という結果を合わせて考えると、人材派遣サービスを利用している企業のほとんどが、改正労働者派遣法が定める「同一労働同一賃金」を少なくとも概要程度は知っていることになる。
続いて、全回答者を対象に「貴社における派遣社員の『同一労働同一賃金』の対応状況」を尋ねてみた(図表2)。最も多かった回答は「対応が完了している」で42%。続いて「対応を進めている」(18%)、「対応予定で内容を調査、検討中」(13%)、「対応の必要はない(派遣社員はいない)」(17%)、「対応が必要か不明」(8%)、その他(2%)という結果となった。
図表2派遣社員の『同一労働同一賃金』の対応状況(択一)
「対応が完了している」と、「対応を進めている」を合わせて、6割の企業が派遣社員の同一労働同一賃金にすでに対応できているか、対応を進めていることになる。冒頭で紹介した人材派遣サービスの利用率は73%で、「対応予定で内容を調査、検討中」までを含めた割合(73%)と一致する。現時点で人材派遣サービスを利用している企業はすべて何らかの対応を進めていると考えられる。
改正労働者派遣法が定める「同一労働同一賃金」を実現する方法は2種類ある。簡単に言うと、派遣先の派遣労働者の間で同一労働同一賃金を実現する「派遣先均等・均衡方式」と、派遣元の企業が他社に派遣するために雇用している労働者の間で同一労働同一賃金を実現する「労使協定方式」だ。
どちらの方式を採用しているのかを尋ねたところ、「労使協定方式」が30%で、「派遣先均等・均衡方式」が22%、「両方」が7%となった。その他41%は「分からない」と回答している(図表3)。これから対応する準備をしているところで、どちらの方式を採用しようか迷っているという可能性がある。
図表3「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のどちらの派遣会社を活用しているか(択一)
続いて、「労使協定方式」または「両方」と回答した回答者に限定して、派遣社員の「同一労働同一賃金」の対応で、難しいと感じている(感じた)ことについて、選択式、複数回答可の形で回答してもらった(図表4)。
図表4派遣社員の「同一労働同一賃金」の対応において、難しいと感じている(感じた)こと (複数回答可)
最も多かった回答は「派遣会社との派遣料金の交渉」で68%となり、この選択肢が唯一過半数からの回答を得た。2位以下は「正社員と派遣社員の職務の区分」(36%)、「同一労働の理解」(30%)、「異なる派遣会社の派遣社員間の待遇差の有無・判断」(27%)、「派遣会社への通知などの事務処理」(11%)、「食堂など福利厚生施設の利用」(7%)、「その他」(5%)となった。
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2020年4月1日に、改正労働者派遣法が施行となり、派遣労働者にかかわる「同一労働同一賃金」が義務化されました。その概要と企業がすべきことを、派遣法にくわしい石嵜・山中総合法律事務所の豊岡啓人弁護士に伺いました。
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