「ホーソン実験(Hawthorne experiments)」とは、人間の動機づけに関する古典的研究のことで、シカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われました。
テイラーの提唱する科学的管理法が行き詰まりを見せていた当時、新たな生産性拡大の理論を構築するために、アメリカハーバード大学の精神科医メイヨーや心理学教授レスリスバーガーらがホーソン工場で5年にわたって行った実験で、照明実験やリレー組みたて実験、面接実験、バンク配線実験が行われました。
メイヨーらは作業場の明るさに注目し、照度を下げると、どの程度作業効率に影響があるのかを実験しました。ところが、照度を下げても、作業効率は下がるどころか、逆に上がっていくという結果が出ました。
これは、調査の対象となっていて、注目されている労働グループの一員となっていることが、効率的作業の動機づけになったのではないかとの見解を示し、労働者の作業能率は、客観的な職場環境よりも職場における個人の人間関係や目標意識に左右されるのではないか仮説をたて、次々と実験を行っていきました。
なお、リレー組立実験は、賃金・休憩時間・部屋の温度などさまざまな条件を変えながら、6名の一定の従業員に組み立て作業を行わせ、作業能率の変化を見ましたが、実験を重ねれば重ねるほど、作業能率は上がり、途中、実験前の条件に戻しても、作業能率は上昇したという結果がでています。
また、面接実験は、延べ21000人強の労働者に対し聞き取り調査を行い、労働意欲は、客観的な職場環境の影響は少なく、個人的な経歴や職場での人間関係に大きく左右されるという結果が出て、労働者の不満は、作業現場の客観的な要因のみではなく、人間の全体情況と結びついていると結論付けられました。
過去の実験から、生産性に影響するのは、人間関係や監督者のリーダーシップであるという仮説が導かれ、最後の実験、バンク配線実験が行われました。
これは、職業の異なる労働者が協業という形で一つのグループとなってバンク=電話交換機の端子の配線作業を行い、成果を計測しようとした実験で、労働者は自ら労働量を制限していること、品質管理では、検査官と労働者の人間関係が評価に影響することなどが結果として現れました。
以上のことから、公式的な組織の規制力よりも、インフォーマル的な組織での集団規範の方が労働意欲に影響することがわかりました。よって、職場の人間関係を形成する要素として、リーダーのあり方が問われ、現代のリーダーシップ研究のきっかけとなりました。
なお、研究結果の解釈等の批判や異論も多く、知名度は高いものの、いまだ、評価は定まっていません。