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2次評価者の役割と課題

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2014年05月16日

人事評価において、被評価者の直属の上司と、その上の上司とが2段階で評価を行う2次評価制を採用している企業は多いと思う。

2次評価の目的として考えられるのは、

① 1次評価者が気づかなかった点を評価することで、評価の客観性を高める
② 同じ事実や行動でも違う視点や角度から評価することで、評価が偏るのを防ぐ
③ 2次評価者が複数の部署を評価対象とすることで、部署間のバラツキを少なくする

などだ。要するに、評価の納得性と信頼性を高めることが目的といえる。

このような目的を達成するために重要となるのは、1次評価者と2次評価者が各々の役割を理解し、果たすことである。2次評価のシステムは、単に評価者を2人に増やしたわけではないのだ。

 

評価者の役割については評価に関する基本的な解説書などで述べられているが、これは一般に1次評価者のものだ。

それでは、2次評価者に特有の役割とはどういったものだろうか。期待される役割として挙げられるのは次の3つである。

1.1次評価が適切であるかどうかのチェック

まずは1次評価者の評価が妥当かどうかの確認である。ポイントは次の3つ。

① 個別の評価項目の妥当性のチェック
各評価項目の1次評価者の評価が、自己の観察から見た評価と比べてどうかである。2次評価者自身もきちんと評価を行うことが前提だ。「信頼するA課長の評価に間違いはない」といった考えは、2次評価者としての役割を放棄していることになる。

② 総合的な評価の妥当性のチェック
個別の評価項目とともに、総合的な評価の妥当性も確認する必要がある。1次評価者は、個別の評価項目の評価に注力するあまり、その積み重ねである総合評価には無頓着となるケースがあるからだ。この辺りは、大所高所からの評価を期待される2次評価者の重要な役割の1つである。

③ エラー傾向に陥っていないかのチェック
評価にエラーはつきものであるが、評価者自らは認識しづらい面もある。第三者の視点から、エラー傾向がないかをチェックする。

2.1を踏まえた1次評価者へのアドバイス・意見調整

評価制度の仕組みにもよるが、1次評価者と2次評価者とで評価が相違した場合は、両者で話し合いをするのが一般的だろう。特に、評価が2レベル以上乖離している場合は、互いの評価の根拠を確認し合い、両者が納得のいく調整をする必要がある。単純に真ん中のレベルをとるといった安易な調整をしてはならない。

3 .1次評価者の評価能力の開発・向上

マネジメントスキルにおいて、メンバーを評価する能力というのは重要なウェイトを占める。1次評価者の評価能力を高めるのは、直属の上司である2次評価者の重要な役割ということになる。

 

次にこれらの役割を果たすために、どのような取り組みが必要かを整理しておこう。課題となるのは以下の3点である。

1.被評価者をしっかり観察すること

適正な評価の基本は、まずは被評価者をしっかりと観察することだ。2次評価者であってもそれは同じである。もちろん、1次評価者と違って、被評価者を直接マネジメントするケースは限られるだろうから、その機会は少なくなるかもしれないが、心がけ次第でチャンスはいくらでもあるはずだ。特に、トラブルが発生したときなどは、2次評価者が乗り出すことも多いだろう。このときの被評価者の対応ぶりなどをよく把握しておきたい。

2.1次評価者の評価傾向をつかんだ上で評価を行うこと

全体的に評価が甘いとか、中間点が多いとか、1次評価者はさまざまな評価傾向をもっている。これをつかんだ上で、評価をすると1次評価者のバイアスを減少できる。もちろん、自分自身の評価傾向も認識しておく必要がある。

3.部署全体の視点から評価をすること

当然ながら、2次評価者は1次評価者よりも広い管理範囲を有しているので、評価対象者も多い。複数の部署の2次評価を行うことも多いはずだ。そうすると、ある部署と別の部署との比較ができることになる。ある部署でA評価された事実も、他の部署から見ればB評価が妥当ということも十分にある。これらの判断ができるのは2次評価者ならではといえる。

 

このように2次評価者には、2次評価者としての役割と課題がある。人事評価に直接的に影響を与えるのは1次評価者だが、その評価に責任を持つのは2次評価者である。何のために2次評価をするのかをしっかりと認識しておくことが大切となる。

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