ニコニコ動画を運営するドワンゴが、2015年度新卒採用から自社を正式エントリーする就活生に受験料2525円を課した。それに対して厚生労働省東京労働局が職業安定法に抵触するとして、徴収をやめるよう行政指導をしたことが話題になっている。
「地方に在住する学生は交通費などの経費負担が大きいため首都圏の学生と比較して金銭的な理由からも就職の機会を奪われている状況にあると考えています。弊社が一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)からのみ受験料を徴収するのは、この格差を多少なりとも軽減する狙いです。」
また、同社のホームページでは、2014年2月26日現在の応募状況が出ているが、昨年同時期と比較して全体で64%も応募者が減ったという。特にリクナビが掲載拒否(受験料をとる企業は掲載できないとのこと)ことも大きかったようだ。
もちろん真剣ではない応募者を減らすことが目的だったわけで、そのこと自体は何の問題も無いだろう。ホームページには「昨年以前と比較して、応募者の評価にじっくりと時間をかけられるようになり、また、昨年よりも応募者の質が向上していると感じています。」と書かれている。ちなみに、受験料は全額寄付するそうだ。
さて、この問題については識者の間でも賛否が分かれているようだが、私は全く問題を感じない。
まず第一に、厚生労働省が懸念するような、多くの企業への広がりはないと思われることだ。日本の主要な大手企業のほとんどは世間の目を気にしてそんなことはしないし、採用に苦労している大半の企業は、受験料など課そうものなら一気に応募者が減るので、こちらもできない。つまり、ごく一部の人気の高い企業、しかもマスコミで多少叩かれても平気(?)なドワンゴのような会社だからこそできることである。
第二に、学生がやたら気軽にエントリーをする状況に対してドワンゴが一石を投じた意義はあるだろうが、正直言ってそれで他の企業が追随して変わるとは思えないのは上記の通りだ。問題なのは、気軽にどんな企業にでも応募できてしまう就職ナビの仕組みの方である。
第三に、企業の採用での最終目標は自社の求める優秀な人材を採用できるかどうかに尽きるのであり、ドワンゴが最終的にこの方法でより優秀な学生を採用できれば「勝ち」であり、出来なければ「負け」なのであって、他者がどうこう言う問題では全くないということだ。採用手法において話題性を高める戦略はもちろん「有り」だが、それが話題性倒れで終わり、採用の質が落ちたとしたら「負け」である。学生には受験するかしないかの自由が有るので、いやなら受験しなければ良いし、受験料を払っても受けたい人は受ければ良い。大学の受験料に比べれば安いものだ。
最後に一言。採用手法はもっと多様であっていいと思う。ワークスアプリケーションズのインターンシップ採用などは秀逸な採用手法だが、簡単に真似できないからこそ、同社はこの方法で優秀な学生を採用し続けられているのだろう。日本企業の新卒採用は、ある意味個性が無さ過ぎる。その意味では、ドワンゴが今回話題性のある新しいチャレンジをしたことだけでも評価したい。