日本経済新聞が3月16日にまとめた調査によると、来春(2015年)の企業の大卒採用計画が14年春に比べ約15%伸びており、リーマン・ショック前の07年の水準に迫っているという。
調査対象は上場企業および同社が独自に選んだ有力な非上場企業で、合計4590社とのこと(回答は2356社)。これは大手企業中心の数字と言え、全産業での求人数はそこまで伸びていないだろうが、雇用状況全体が大幅に改善していることは間違いない。
『16年春には経団連の新ルールにより就職活動の開始時期が遅れる。ルール変更に伴う混乱を見越して手厚く採用する動きも出ている。』(筆者注:プレエントリー、説明会などの開始時期が12月→3月、選考開始が4月→8月に繰り下げとなる)
『採用計画調査で、会員企業以外も含めてルール変更への対応を聞いたところ、61%の企業が「指針に従う」と回答した。一方で変更が「マイナス影響」とみる企業も60%で、ルール変更に懸念も残る。』
『新ルールは経団連に加盟しない情報技術(IT)企業や外資系企業には適用されない。』
『ルールはあくまで指針で、いずれ「空文化するのでは」との声もある。調査でも全体の38%の企業がルールへの対応を「未定・加盟していない」と答えた。』
『ルールの変更で、人材の水準や人数確保が難しくなると心配する企業は多い。』
日本経済新聞は、社説を含め、新卒採用の時期を遅らせるべきだという主張を展開し、遅らせないのは企業のエゴであり、世界の常識から外れている時代遅れの産物のような言い方をしていたのだが、このようなアンケートの声を聞いてどう考えているのか、ぜひ教えてほしいところである。
ルールの変更で企業が「人材の水準や人数確保が難しく」なっても良いと考えているのか、それとも、そうならないと考えているのだろうか。これまで同社の主張に首を傾げてきた筆者としては、コメントが無いことに首を傾げたくなる。
さて、HR総合調査研究所が調査したデータによると、16新卒採用において、最終学年の8月以降に選考を開始すると答えた企業は2割程度にすぎない。つまり、日本経団連の指針に従う企業が61%とする日本経済新聞の上記データよりはるかに多くの企業が8月以前に選考を開始しようとしている。
この差は、日本経済新聞が大手企業中心に調査をしているのに対して、HR総合調査研究所が全企業を対象にしているため、大手企業の比率が前者より低いことが要因として考えられる。また、HR総合調査研究所は企業名を掲載しないことを条件にアンケート回答を得ているため、より本音の答が出やすいことも影響していると考えられる。
では選考開始の時期として最も多いのはいつか。企業規模に関係なく、4月と答えた企業が最も多かった。これは15卒と変わらないスケジュールということになる。そうなると、3月にプレエントリーや会社説明会を開始して、すぐに選考がスタートすることになる。企業理解、仕事理解が進まないまま選考に突入することは大変危険なので、3月以前に企業と学生が接触する機会が増えると想像できる。
現時点では予想の域を出ないが、新しい採用活動時期の「指針」は「空文化する」流れにあるようだ。ある程度の混乱は避けられないかもしれない。
そのような中で、企業は採用する人材の水準を落とさずに自社が求める人材を獲得しなければならない。ルール変更に過度に惑わされない採用スタンスを、企業は今から考える必要があるだろう。