テレワークの課題はいくつかあるが、その一つが人事評価をどうするかである。これまでの評価制度は、評価者が部下の仕事ぶりを直接見ることを前提に制度が組み立てられていた。テレワークでは、基本的にリアルで見えない部下を評価していかなければならない。
検討要因は、現在の評価制度、テレワーク従事者の職種・人数・労働時間、仕事の進め方、IT環境・ツールの活用度、さらには業種・業態特性などさまざまあるが、ここではまず、基本の枠組みを整理しておきたい。適切な仕組みを考えていくための視点と考えていただければ結構である。
切り口は「評価できるものを評価する」だ。この切り口から以下の4つのパターンを提示したい。
1.評価できるものを評価する
2.比較的評価しやすいものを評価する
3.努力・工夫により評価しやすくして評価する
4.評価しづらいものも評価する
1~4は段階的なものである。まず1、これに加えて2、さらに3、最後に4という4段階で考えるというものだ。
1.評価できるものを評価する
まずは、リモートでも見えるもの、把握できるものを評価する。代表的なのは、成果・業績(数字に表われるKPI、現物が示される成果物、目標達成度、仕事の質・量、納期遵守など)である。
ただし、成果だけだと、社員の能力や努力にかかわらず評価が低くなってしまい、社員の納得を得にくくなる恐れがある。また、成長のためには成果を出すためのプロセス面に着目し、向上課題を把握することが重要である。そこで、次のパターン2を検討する。
2.比較的評価しやすいものを評価する
プロセス面の評価とは、具体的には能力、態度、行動などの評価である。このうち、リモートでも評価者が把握しやすいものを評価する。
ここでは主な能力・態度項目について、リモートでも比較的評価しやすいものと評価しづらいものとに分けてみよう。
【能力】
・比較的評価しやすいもの
業務知識、問題解決力、計画性、企画提案力、情報収集・活用力
・評価しづらいもの
理解力、判断力・決断力、交渉力・折衝力、コミュニケーション力、人材育成力、創意工夫力
【態度】
・比較的評価しやすいもの
責任感、積極性
・比較的評価しづらいもの
チームワーク、規律性
ざっくりと分けたので、具体的な内容により違いは出てくる。たとえば、企画提案力のうち、企画の部分はリモートでも見えやすいが、提案の部分はその場に同席していなければ見えづらいだろう。また、責任感の中身のうち、役割認識・自覚、主体性といった部分は見えづらいと思われる。こういった点をカバーするために、次の3が必要となってくる。
3.努力・工夫により評価しやすくして評価する
成果に至るプロセスをより把握できるよう努力・工夫する。たとえば、チャットで気軽にコミュニケーションが取れるようにする、1日に1回、2~3分でよいので簡単な面談をする、週に1回は全員でミーティングを行い業務の進捗状況や問題などを共有する、などだ。
4.評価しづらいものも評価する
見えない(見えづらい)ものを評価するときは、無理に上司が評価をせず、部下の自己評価によるという考えが求められる。もちろん、部下の評価を鵜呑みにするのではなく、根拠を確認するなどのプロセスは必要となる。確かに自己評価が高くなったり、低くなったりする懸念はあるが、適切なコミュニケーションが取れていれば、異常な高評価・低評価は避けられるはずだ。
「評価できるものを評価する」というのは人事評価の本来的な原則である。これはテレワークであっても当然に当てはまる。テレワークのウェイトが高くなっている企業では、これまでの評価制度で大丈夫なのか今一度検証が望まれる。
そして見直しが必要であれば、この4パターンを基に考えてみてはいかがだろうか。まずは1を検討し、必要に応じて2・3・4を追加していくというやり方である。やみくもに見直しを行うよりは効果的と思うので、参考にしていただければ幸いである。